もっちゃん

昼顔のもっちゃんのレビュー・感想・評価

昼顔(1967年製作の映画)
3.9
愛する人を手放しで愛することのできない女の哀しき性を描く。監督は『アンダルシアの犬』で有名なルイス・ブニュエル。『アンダルシア』で放たれていた異様な表現力とシュールさは抑え目でこういった正統派も作れるのかと感心。

幼少期のトラウマから不感症になってしまった主人公セヴリーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は行き場を失った性欲を解放するために日々見知らぬ男たちに犯され、虐げられる夢を見る。森の中で馬車を走らせ、夫も寄ってたかって自らをレイプする夢。
しかし夢とは裏腹に現実では性を解放できない。追いつめられた彼女は売春に手をだし、昼は売春婦として、夜は良き妻として仮面的生活をするようになる。

売春宿を訪れる男性客は皆特殊な性癖を持っている人が多く、はじめは彼女も嫌悪感から拒絶していた。簡単に抜け出すこともできた。しかし、彼女はのめりこむという選択を自らに下した。
男性から言い寄られても彫像のように美しい無表情だった彼女が徐々に恍惚の表情に変わっていく。これは現実離れした美貌を持つドヌーヴにしかできない唯一無二の演技である。

夫を愛するあまり、夫との愛を確認する術を知ろうとするあまりより禁断の方向へと進んでしまうというパラドックス。複雑な性癖を持ってしまった女の性とも言うべきものなのだろうか。
またはセヴリーヌは本当は夫のことを愛していなかったのかもしれない。夫への愛はとっくに枯れていたのかもしれない。新しい愛し方を見つけてしまった彼女の罪と罰。しかしラストは実質、彼女の一人勝ちを表しているのだろうか。