桃子

昼顔の桃子のレビュー・感想・評価

昼顔(1967年製作の映画)
4.0
「監督の趣味に納得」

カトリーヌ・ドヌーヴ目当てで鑑賞。最近は俳優さん優先で見る映画が増えてきた。
ドヌーヴ様が娼婦の役をしているということだけ知っていた。オードリー・ヘプバーン同様、娼婦の役は全く似合わないキャラクターである。説得力がないだろうなあと思いながら見ていたら、説得力云々より、ブニュエル監督の趣味だったのかと、そっちを納得してしまった。
冒頭から衝撃的なシーンである。最初、それがヒロインの妄想シーンだとわからなかったから、え?マジで?!とドンビキしてしまった。でも、妄想だとわかったら、納得である。
ドヌーヴは下着姿にもなるし、全裸にもなるし(シースルーの服を着ていたけれど)、体当たり演技をしている。と言っても、娼婦としての「仕事」をしているシーンはほとんど出てこない。ヒロインの妄想シーンはけっこうあるのに、リアルなシーンは逆に隠されている。この点はポイント高いなあと感心してしまった。
監督がなぜ娼婦が似合いそうにないドヌーヴを起用したのか、見終わって初めて理解できる。彼女は裕福な家の奥様で、夫のいない昼間だけ娼館に通うのである。上品で優雅でミステリアス。娼婦というイメージとは真逆だからこそ、この映画が成り立つ。
そしてやはり監督は魅せ方が非常に上手い。冒頭とラストの馬車のシーンは特に印象的だ。どこかシュールなところも好みだった。
不感症の女性なら、身につまされると思う。なかなか人に相談できない悩みだし、何かのきっかけがあれば“治療”して、満足のいく夜の生活を送りたいと思うのも無理はない。ただ、SMの趣味のない人は、ちょっと引いてしまうかもしれない(^_^;)
こういう映画が賞(第28回ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞)をとったことが驚きである。「ロシュフォールの恋人たち」を見た時に、女優になりたかった姉は賞とは無縁で、それほど本気ではなかった妹が賞をもらったと言う解説を読んだ。それで見てみたいと思ったのも動機のひとつだったのだけれど、いやーびっくり。物語もさることながら、ただただ監督の手腕に圧倒されてしまった。こういう変態系映画、嫌いじゃないです(^^) 
桃子

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