半兵衛

熟れすぎた乳房 人妻の半兵衛のレビュー・感想・評価

熟れすぎた乳房 人妻(1973年製作の映画)
3.7
曽根監督による乾いた愛の物語、でも倦怠期に入った人妻と彼女に好意を抱く童貞男のドラマという変な構成になっているので喉に魚の骨が刺さったかのような妙な違和感が全編にわたって残っていてすっきりとしないけれど後を引いてしまう作風に(曽根作品は大体そんな感じの作品ばかりではあるが)。

人妻パートでは宮下順子が枯れてしまった夫との性生活を我慢しているうち、様々な誘惑に負けて一線を越えてしまうという一昔前のレディースコミックみたいな展開になるのだが女性としても女優としても充実してきた時期だけに悶々とした他人の女性としての背徳的エロスが半端なく吹き出しており童貞男ならずとも魅了されてしまう。

ロマンポルノ常連俳優である影山英俊のチェリー演技もリアルで、映画に深みをもたらす。

そしてもう一つ挙げたいのが成瀬巳喜男、鈴木清順、野村孝といった巨匠たちとタッグを組み傑作を作ってきたカメラマン・峰重義による原色を効果的に使った撮影で、不毛な愛の世界を構築するのに大きく貢献している。

ラスト、タクシーのメーターと宮下順子の戻れない心境を被せた演出が決まっている。
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