Mila

ジンジャーの朝 〜さよなら、わたしが愛した世界のMilaのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

愛する人への怒りが悲しみに変わる、本当に悲しい時は何も言えなくなる。

リアルで悲しくて朝からボロボロ泣いた。


人をゆるすって難しいと思うけど、ラストのジンジャーの詩にとても納得した。
ジンジャーが親友を許せたのは、愛さないことにしたから。
この世界を、生きていることを愛してる(から私は死なない)。自分自身が生きるために、もう彼女を愛せないし、一緒にはいられない。愛したあなたとの関係を過去にするかわりに、「あの日愛したあなたのしたこと」に感情を置かない、だからもうとがめない。

逆に、ジンジャーのお母さんがふたりを罵倒して自殺しようとしたのは、どうしてもローランドを愛していたし、彼なしで生きることが考えられなかったからだと思う。
ジンジャーが詩で父親について直接言及しなかったのも、血縁関係があるし生活の頼りになることを考えると、親友と同じように簡単に「過去に愛した人」にはできないから。
でも、最後の「許すよ」は、将来、父親にも言いたいという願いをこめての言葉に聞こえた。

大好きだったものを「愛してた」と認めて、全否定するのではなく「自分とは違う」ことを認めて、それなしで生きていくことを決めて、許す。
そんな切実で前向きな決断を下すのはいくつになっても難しくて、大切なこと。
私も、また別れが訪れたとき、こんな風に生きられたらいいなと思った。


表現的には、ファッションでも親友同士の違いが描かれているのに感心した。
双子コーデのインナーはほぼモノトーンだったけど、着ているコートの色は赤ちゃんの時ふたりでブランコに乗っている時から違った。ジンジャー(エル・ファニングちゃん)は、赤毛と緑の目によく似合う緑のコートを身に着けている。
そして、ジンジャーがローザを意識していない時はインナーが緑。最後はお母さんと同じ黒のタートルネック。
見返すと話の伏線になる仕草や言動もいたるところにあるし、細かいところまでの作りこみがすごい。


ストーリーや演出自体もとても高度だと思ったけれど、全体的に悲しかったのにずっと目を離さずにいられたのは、どのシーンでも美しいエル・ファニングちゃんのせいだし、ボロボロ泣いてしまったのも演技がうますぎるエル・ファニングちゃんのせい。
一人で遠慮なく泣くシーン、泣いてることに本当は気づいてほしいシーン、信頼できる大人に見守られてやっとわんわん泣けるシーン、父親を失った目、親友が妊娠したってお母さんに確信させる一番悲しい目……。

記録のために言葉にしてしまったけど、この映画はものすごく言葉を超えてたと思った。
音声なしで観ていても泣いていた気がする……。
Mila

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