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リアリティのダンスのchsyのレビュー・感想・評価

リアリティのダンス(2013年製作の映画)
3.8
あのエル・トポの監督が23年ぶりに 作った作品、と聴けば観たくなるのは当然だが、すぐさま、また訳の分からない展開なんだろうなーと予想し、映画館へは足が向かなかった。
が、次の作品に取り掛かっているとい ニュースに、これは観ておかねば、と慌ててDVD鑑賞。

まず、驚いたのは監督が80歳を超えて いるという事。
その年齢で作った作品が、これ。
で、エル・トポに代表される破天荒な映 画を作っておきながら、映画監督が出来るほど健康な状態で80歳まで生きているという事実。
そうか。映像表現の可能性としてグロテスクな映像、奇をてらった展開を作るだけで、彼自身、実際は非常にマトモナ人間なんだろうな、と思った。

彼の幼少期を描いた、と言われる本作で も、主人公はいたってマトモな気の弱い少年である。
しかしチリの時代背景を考えると刺激の 強い時代ではあったに違いない。
気の弱さの裏側でどんな思考を形成した のか。劇中の少年の赤い唇が印象的だった。

登場人物の個性炸裂したる部分は、カル トたるべきしてカルトを作っている感もあった。
エル・トポ同様、目をそむけたくなる、 痛いシーンも…

ただ、我々中年層にとっては、どこか勇 気を与えてくれる作品でもあった。
80歳でもこういう事考えていいんだ、 と。
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