昼行灯

ゲームの規則の昼行灯のレビュー・感想・評価

ゲームの規則(1939年製作の映画)
4.0
群像劇のプロットも撮られ方も最高❤︎悲劇なのに喜劇、喜劇なのに悲劇!大胆なのに繊細!厭世的なのにロマンチック!詩的レアリスムの極致!

遠くにありて思うというのか、不在の存在というのか、目の前にいない恋人を科学技術の産物であるラジオと小型望遠鏡が示しているというのがまず冒頭のシーンからしてよかった。
冒頭で飛行士が恋人の不在をラジオに向かって愚痴る音声がサウンドブリッジによって、当の恋人に届く。その恋人はラジオから聞こえる声によって、不在の存在としての飛行士を認める。
社交の日、その恋人は望遠鏡で外の景色を眺める。すると、画面は望遠鏡のレンズ越しの景色、すなわち恋人の視点ショットに切り替わる。そこには恋人の夫の不倫現場が写ってしまっている。この時、恋人は夫が目の前に現前していないにもかかわらず、その存在を目にしている。
このように、科学技術の産物は、社交界の裏側で繰り広げられているゲームを覗き見る装置として機能している。そして、電気式のおもちゃのコレクターであり、それを社交の場で披露する恋人の夫はゲームを取り仕切る責任と権利があるかのように思える。
だからこそ、それぞれが不倫に熱を入れ、表舞台に影響を及ぼすと、それまで立派に動いていたおもちゃの音楽が止まるのだろう。そしてゲームの破綻によって飛行士が死ぬと、恋人の夫である伯爵が建物の正面に立ち、社交メンバーに向かって哀悼の辞を述べ、物語は幕を閉じたのだ。

群像劇を展開するにあたって、主要な舞台を屋敷の玄関入ってすぐの広間にしたのが面白かったと思う(建物の構造はいまいちはっきり分かってないが)。なぜなら広間には四方の部屋(ドア)に加えて中二階、2階へと続く階段を演技空間に用いることができるからだ。
この物語は、伯爵夫人と、その側近の侍女を取り合う五角関係(ヤバ😅)と三角関係からなっているが、その主要な2筋の人間関係が絡み合うためには、平面的な空間では飽き足らない。本作品の面白さは、この2つの恋愛関係をひとつの画面の中で同時に展開させているところにあるのだ。
例えば、五角関係の1人が三角関係の1人を助けようとしていたら、画面奥から恋敵がやってくる。また、五角関係のうちの2人が争いをはじめたシーンに三角関係のうちの2人の決闘が画面外から乱入してくると言ったような具合である。しかも、その2筋の恋愛関係の片方がX軸上で展開されたらもう片方の恋愛関係はYまたはZ軸上で展開されたり、片方が前景であったらもう片方は後景で展開されると言ったように、複層的な空間構成がなされているところにルノワールの天才を感じざるを得ない。この演出により、群像劇がダイナミックなものになっている。扉がバタバタ開くのもいい動きになっていた。

ほかにぐるっと見渡すような社交界の面々へのカメラ回しとロマンチックなクローズアップを多用する姦通シーンの対比もよかった。あと飛行士の友達ルノワールなんか
昼行灯

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