劇団新感線、いのうえ歌舞伎の中でもハードな作品。
オイディプス王がモチーフとなっているだけに展開が…
ラギ役の藤原竜也さんとシレン役の永作博美さんのお二人以外で成立できたのか?と思うくらい。
藤原竜也さんのモノマネと言えば、
カイジに代表されるように叫びが多いですが、
藤原竜也さんの叫びを見たければ、
シレンとラギみれば?と言いたい。
ホント叫ぶ。心から叫ぶ。
後半になればなるほど、悲痛さが増していく。
対して、シレン役の永作博美さんは、声を押し殺すシーンが多い。
堪えているというよりも、声に出せないような。
シレンとラギの2人の対比が面白い。
武士として将来が明るいだろうラギと暗殺者として日陰に生きるシレン。
指導者を失い閉塞感がある北の王国と指導者が復活した南の王国。
2原論による対比で構築された関係性が、
この世界観のルール。
ルールはいずれ崩れるもの。
崩れる、だから面白い。
シレンとラギは、北の王国の刺客として、南の王国の指導者を暗殺に向かうのだが、それを機にある事実が明るみに出てしまい…
2幕では、シレンもラギも他の登場人物も全てが逆転してしまう。
古い対比が崩れて、新しい対比が生まれる。
登場人物の関係が混沌化してより物語が複雑化していく。
混沌の先に見えるのは、果たして希望か絶望か。
見応え充分な物語に演技巧者な出演者、それだけでも満足ですが、
新感線らしい、時折挟まれるギャグと歌がいいアクセントとなって、上演3時間があっという間に感じるくらい面白い!
なかでも、南の王国の指導者・ゴダイ役の高橋克実さんが本当にカッコよかった。
何かのインタビューで、藤原竜也さんが、
高橋克実さんの役がずるいと言ってたように思いますが、
それも納得のカッコ良さでした。
ラギの終盤のセリフに、
『なぜ俺だけは生きている!!』
とありますが、全編を通してこのセリフが一番キツい。
ラギの悲痛さ、切なさ、苦しさが良く伝わってきます。
袋小路に追い詰められたラギは、絶望に支配される。
対して、絶望を受け入れて、希望を見出したシレン。
前半は絶望に支配されていたシレンが、
後半は希望を携えてラギと向き合う。
シレンとラギがどのような結末を迎えるのか。
是非、ご鑑賞してお確かめください。