キャッチ30

オスロ、8月31日のキャッチ30のレビュー・感想・評価

オスロ、8月31日(2011年製作の映画)
3.8
 ルイ・マル監督の『鬼火』を現代のノルウェーに置き換えた作品だ。場所と時代は違えど主人公の設定は同じだ。30歳を過ぎ、何者にもなれず、自殺願望の強い男。尤も、『鬼火』の方はニヒリズムだが、本作はナイーブだ。

 麻薬中毒者の更生施設に入所しているアンデシュ。麻薬と酒を断ち、施設を抜け出して行きずりの女とセックスしても満たされない。湖で入水自殺しようとしても失敗する。アンデシュは就職面接の為に外出許可を取って、オスロに向かう。

 アンデシュはオスロの街を彷徨う。カフェにいる周囲の客たちの会話を聞き、かつての友人たちにも再会する。だが、日々の生活に追われつつ幸福な生活を送っている彼らを見て、アンデシュは疎外感を感じる。おまけに、元恋人とは連絡がつかず、妹はアンデシュを避けている。アンデシュは自殺の意思をより強くし、禁じていた麻薬を再び入手する……。

 劇中、アンデシュが施設で自分の体験を劇にする話を友人に語る場面がある。最後に「愛してる」と言われて、終わるのだがアンデシュに言ってくれる相手は1人もいない。これは愛の不毛の映画ではないだろうか。無人になったオスロの街並みはミケランジェロ・アントニオーニの『太陽はひとりぼっち』を彷彿とさせる。