Omizu

オスロ、8月31日のOmizuのレビュー・感想・評価

オスロ、8月31日(2011年製作の映画)
4.0
【第64回カンヌ映画祭 ある視点部門出品】
『テルマ』ヨアキム・トリアー監督の長編二作目。『リプライズ』『わたしは最悪。』を合わせて「オスロ三部作」と呼称される。ノルウェー・アカデミー賞であるアマンダ賞では監督賞と編集賞を受賞した。ルイ・マル監督作『鬼火』と同じ「ゆらめく炎」を翻案している。

派手な展開はないものの、ドラッグから抜け出せない男性の心理を繊細に描いている。心理描写が見事なヨアキム・トリアーらしい作品だった。

『わたしは最悪。』からも感じたモラトリアムな話、雰囲気に包まれた一作で、なるほどこれはヨアキム・トリアーならでは。

自分の過去から抜け出せない、自分の弱さから逃れられないという心の動きはすごく理解できる。その宙ぶらりんな自分を真っ直ぐ見つめる勇気もない。

非常に暗い作品ではあるが、トリアーの繊細な心理描写が興味深い。石を持って自殺しようとするシーンで心が痛くなった。彼の一挙手一投足が痛々しく苦しい。

自分に対して不安を抱えたことのある誰もが共感できる作品ではないかと思う。非常に地味な作品ではあるが、今の自分にはかなり刺さった。ラース・フォン・トリアーの甥というイメージが先行していたヨアキム・トリアーだが、立派な作家性を持った映画作家だ。好きな作品だった。
Omizu

Omizu