本作は、″自己増殖を続ける″という、幽霊屋敷「ローズ・レッド」で巻き起こる恐怖の現象を描いた、天才作家スティーヴン・キング製作総指揮・脚本のホラーTVM、いわゆる洋館ホラーである。
テレビという媒体の性質上か、ホラー或いはスプラッター的な描写は息を潜め随分とマイルドになっているものの、そこはやはりキングらしく、その極限的な状況下におけるキャラクター同士の人間模様の変化と、因果を主軸に描いている。
印象的なのは、キャスティングが目を見張るほど作品の雰囲気に合致していていること。
特殊能力ゆえに自閉気味で家に閉じこもって生きてきた少女アニーの、その人生を感じさせる体格といい、幽霊屋敷で現在も″務める″メイドといい、とかくリアリスティックで印象に残る見事なキャスティングだ(しかし、カメオ出演しているスティーヴン・キング本人が一番″濃厚″だったのだが、これは確かめていただくしかない)。
しかし、長い。
こちらの字でもいい、永い。
尺が全部で4時間以上(DVDでは2枚分割)。
私のように暇も時間も人生さえ持て余した人間でなければ本作と真摯に向き合うことは出来ないだろう。
かなり根気と気力と労力がいる作品へと仕上がっている。
こうなってくると、「長いのでスコアは1.2とさせていただきます」という、ふざけ腐ったレビューを上げてしまうレビュアーを生み出しかねない。
主人公たちが件の幽霊屋敷「ローズ・レッド」に出発するまでに約1時間以上かかるのだけれど、そのくせ中盤では所々描写の抜け落ちが見られ、少々混乱させられ、いわゆる″中弛み″も少なからずある。
おそらくは小説的なシーン展開のリズムの為だったのだろうが、2時間とはいわない、せめて3時間にまとめてほしかった。
そうすれば、よりすっきりとした作品になっただろう。
本作に4時間もの気力と労力を費やす価値があるのかと問われたら答えは「NO」だ。
しかし、事あるごとに「忙しい忙しい」と嫌味ったらしくほざき回り、日常が潤っているアピールを遠回しにしてくる人間には敢えて薦めていきたい。
悪意はない。