こたつむり

天使のはらわた 赤い教室のこたつむりのレビュー・感想・評価

天使のはらわた 赤い教室(1979年製作の映画)
3.5
♪ あの頃のわたしに戻って
  あなたに会いたい

日活ロマンポルノの名作。
そんな評判を耳にして鑑賞しましたが…ポルノ映画ってアダルトビデオとは立ち位置が違うんですね。ムラムラを解消するのではなく、寧ろ、抱え込んじゃうんです。

確かにこれは大人の娯楽。
この切ない気持ち、やるせない気持ちは“お子ちゃま”にはツラくて重いですよ。酸いも甘いも噛み分けた紳士だけが共有できる“薄暗い気持ち”だと思います。

しかも、昔は劇場で観るわけでしょう?
サブスクで観るように手軽な感じではないんですよ。わざわざ足を運んで、入場料金を払って、エロとエロの隙間に落ちた“心”に手を伸ばしちゃうんですよ。

いやぁ。僕には理解できない気持ちです。
「まだまだ僕も“お子ちゃま”だなあ」なんて思いますね。もっと切磋琢磨しないとダメですな。しゅっしゅっしゅっ。

特に本作の場合。
人間の薄汚い部分から目を逸らしていないんです。だから、主人公とヒロインの関係も純愛とか言えるものではなく、もっと即物的なもの。見栄とか打算とか共依存とか。そんなものが見え隠れしています。

ただ、その真ん中に灯る炎。
それは言葉にできない想い。
世間の厳しい視線や偏見によって簡単に消えてしまう…そんな儚さをまとった“優しさ”。誤解を恐れずに言うならば、これこそが希望なんでしょう。

だから、切ないんです。
だから、やるせないんです。
いみじくも主人公が「エロ本作りは差別されている」と言うんですが、そのセリフが本作に大きな影響を与えている気がしました。ぶっちゃけた話、世の男性陣は主人公に石を投げることなんて出来ないと思うんですけどね。

まあ、そんなわけで。
モヤモヤを抱え込みたいときにオススメの作品。ちょっとエロ描写がくどい気がしますが、ポルノ映画だから仕方ないと割り切って臨んだほうが良いです。ちなみに時折コマが飛ぶのは、映倫の審査に引っ掛かったからなんですかね?噂には聞いていましたが、リアルで観てみると奇妙なもんですな。
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