茜

ストラッターの茜のレビュー・感想・評価

ストラッター(2012年製作の映画)
3.5
モノクロ映像と、どこか懐かしいロックナンバー。
いかにも「オシャレ映画」なんだけど、気取り過ぎず等身大な感じが好印象です。

主人公のブレッドは楽器店でバイトしながらミュージシャンを目指すバンドマンで、近所のレコードショップ店主兼ミュージシャンのデイモンに憧れている。
ある日ブレッドは彼女にフラれてしまうんだけど、その彼女の新しい彼氏がデイモンである事を知り更にぐったり落ち込んでしまう。
そんな折に自身のバンドメンバーも次々と脱退してしまい解散の危機が迫ってしまう。

ブレッドの元彼女は本編に出てくる事はないんだけど、私はこの人がデイモンに乗り換えた気持ち分かるなぁ。
デイモンの方が知的な雰囲気で、マニアックな音楽知識が豊富だから話をしてみたいって思うし、面倒臭そうなタイプだけど魅力的に見えるもん。

この映画に漂う自然体な脱力感は、なかなか技ありでクセになりました。素人さん達を集めて出演させたのも功を奏したのでは。
この映画に出て来る多くの人達は、自分の楽しみや夢を追いかけながら自由に生きていて、現実的に考えると将来が心配になってしまう…。
それでも、この映画の中で笑ったり落ち込んだりしながら過ごす彼らを観ていると「映画の中くらい自由に生きさせてよ」って気持ちになる。
地に足のついたメッセージ性はないけど、心地よいロックナンバーに合わせて彼等のだらしない生活をぼけーっと眺める時間も、それはそれで私には有意義に思えた。

楽器店主のおじさんと、おじさんの飼い犬フレンチブルがすっごく良い。
ブレッドがこの犬を散歩に連れて行くシーンが可愛すぎて幾らでも観ていられる気がしたし、店主のおじさんが再びドラムを叩き出すシーンはこの映画で一番好き。
茜