ぶてぃ

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマンのぶてぃのレビュー・感想・評価

5.0
ルーティンの繰り返しにより安定させ閉じ込めていた狂気がルーティンの綻びと共に現前したとも思えるし、振り返ってみれば、1日目のルーティンこそ狂気で、2日目3日目は徐々に正気を取り戻していく過程だったようにも思える。終わってみれば、それまで見ていた行為が反転してまったく異様なものとして映る。
彼女は、家という秩序を維持するために、自身を生贄に儀式を執り行っているかのようだった。

恐ろしいのは、念入りに切り取られた家事の時間をジャンヌと共有したことで、この映画が私の平和な日常生活に侵入し、家事をすることをもう当たり前のこととしてやり過ごせなくなってしまったことだ。観客である私はそのむごたらしさを受け止めざるをえなくなる。