華

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマンの華のレビュー・感想・評価

5.0
3時間を超える映画は集中力が切れるから映画館でないと見れない。それでも単調な映画は大抵寝てしまう。
この映画は198分と長尺な故にクライマックスまで何のドラマも起きないシンプルすぎる映画だが久しぶりに飽きずに見れた。
(いや本当はちょっと寝た)

夫を亡くし、息子と暮らす主婦の日常を定点カメラがひたすら追いかける。
観客はまるで家に住み着く虫になったかのように彼女の日常を観察し続ける。
いま思えば彼女が私達にとって箱の中の昆虫だったのかもしれない、

朝起きる。
コーヒーを淹れて朝食を作る。
息子を起こす。息子を見送る。
隣の赤ん坊を預かる。
買い物に行く。
夕食の準備をする。じゃがいもをゆでる。
売春をする。
息子と一緒に夕食を食べる。
食後の散歩に出かける。
就寝する。

本当に何てことのない日常なはずなのに序盤から強烈な違和感を感じる。そもそも普通の主婦が売春するのかという疑問はさておき、この人、狂気じみているほど几帳面。自分の中に立てた秩序を守り抜いて生活している。普通の人なはずなのに何だか怖い。そう感じた違和感が3日目に何とも言えない形で爆発する。

最後の彼女の表情には、自暴自棄になって自分の全てだったものを壊した時の一瞬の爽快感と同時に襲ってくる喪失感が詰まってた。
華