じゃがいもの皮を剥くだけの映画じゃない。使っていない部屋の電気はいちいちマメに消すし、食事中は会話のない息子と就寝前に濃い話をするし、几帳面で神経質なのに、息子の靴磨きセットを置くこともある台所のテーブルに直に小麦粉を撒いて肉を転がして衣をつける。玄関のベルはギョッとするほどうるさいし、赤ん坊の鳴き声にも閉口だ。
細部に神が宿りまくっている。ブルーグレーの衣装が美しい。狂気の予感しかないシチュエーションで、ルーティーンのひとつひとつが絶妙にに崩れていく様に、静かに胸が高まる充実の200分だった。
大好き。