くもすけ

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマンのくもすけのネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

やっと見た世界一の映画。割りとあっという間。すべてのカットでデルフィーヌが素晴らしい。アケルマン25歳!

廊下側から撮ったキッチンのモーニングルーティンが素晴らしい。コーヒーをいれ、靴を磨くため片手で古新聞を開き、手前の棚から食器を取り出す。すべてが自動化された機械の仕事。
生卵の殻を捨てるゴミ箱の蓋が映る、的確な撮影も素晴らしい。女性スタッフだけで撮ったらしく(参加十分条件が「女性」だったゆえ撮影現場は混乱したようだが)、撮影監督も女性のバベット・マンゴルト。70年からNYに移り実験映画界に出入りしてアケルマンと出会ったのか。最近だとソンタグ監督でマリーナ・アバラモビッチのパフォーマンスを記録したドキュなどがあるようだ。アバラモビッチは74.5年ころ過激な作品を連発していたので本作と通じるところがあるかも。下にも書くがいろいろ血の気の多い時代だったようだ

1975年は女性の年。年始にフランスで中絶が合法化され、国連は当年を国際婦人年と定め翌年にはブリュッセルで国際フェミニストネットワークが創設される。アケルマンいわく皆が女性について話していた、という時代。

そしてデルフィーヌ。前後の出演作もすごいが(73年にはロージー監督「人形の家」なんてのも)、母子ほど年の離れたアケルマンとの共作はこれが初めて。メイキングAutour de Jeanne Dielmanを見るとかなり細かい演出をめぐり議論してる。出自も世代も全く異なるデルフィーヌとの格闘のなかで他作品にない異様な緊張度が生まれたことが伺える。アケルマンが繰り返し諭す「ゆっくり」という言葉が印象に残る(同時にデルフィーヌが全くそれに従わないことも)

この時期デルフィーヌはフランス初ビデオアーティストのルッソプーロスとの共闘でフェミドキュ作品を監督している。以下記事が参考になるhttps://www.gqjapan.jp/culture/article/20191227-modern-woman-20
監督作は1975年「マゾとミゾは舟でゆく」(題!)、翌1976年「SCUMマニフェスト」。特に後者は今作のカットアップピースであろうソラナスの著作を自宅居間で朗読するビデオで、三者三様アプローチの違いを探る手がかりになりそう。カリーナがはさみをとり、ソラナスが現実で実践し、アケルマンが速度を落とす。こればっかりは1倍速で見なければ意味がないSlowly Cut Up Masterpiece