映画漬廃人伊波興一

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマンの映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

3.7
この女性はターミネーターか。

シャンタル・アケルマン
『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』

徹底的に時代の話柄に捉われずひとりのシングルマザーの(世話焼き)を追っていく。
それがこの作家の強い方法意識とそれを作品化させる手腕として印象づけた事は、後の『青春神話』『愛情萬歳』(蔡明亮監督)『ブンミおじさんの森』『光りの墓』(アピチャートポン・ウィーラセータクン監督)そして我が国の『寝ても覚めても』(濱口竜介監督)などアジアが世界に誇る傑作群の出現が証明してます。

何より恐ろしいのは3時間を超える犯罪的な時間の中に誰一人聖女も悪女も登場させず、どちらとも名付ける事もできない、それ以前の(女性)という不気味さを徹底的に抉り出している点にあります。
この終わりのない(世話)の反復に耐えうる男性が居るならお目にかかりたいものです。