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忘れられた皇軍のhasseのレビュー・感想・評価

忘れられた皇軍(1963年製作の映画)
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PFF主催第四回大島渚賞の記念上映にて。
太平洋戦争で強制的に日本軍兵士として戦わされた在日韓国人の傷痍軍人の、国家への反抗を追った短編ドキュメンタリー。
戦争の被害者を映すカメラは「加害者」となることを大島渚監督は理解し、覚悟を決めた上で撮っていた。映される者の傷口を、悲劇を公につまびらかにする行為は暴力的とも言える。が、その一線を越えて、行動を共にする監督と演者たちの間に(想像の範疇でしかないが)信頼関係が生まれ、飲み会のシーンの涙、サングラスを外すというショットに至ったのではなかろうか。

大島渚賞総評として、黒澤清監督がビデオメッセージで「日本映画は「人」を描くのはうまい監督がいるが、その先の「社会」を上手く描いた作品が少ない」とのコメント。大島渚賞を冠するにふさわしい作品とはつまりそういうことなんだろうし、日本映画が海外で受けづらい要因の一つなのかもしれない。

その後の歴代受賞者のトークショーで、「映画を撮ることもまた一つの社会的行為だと思っている」という提起があり、「監督のやりたいことがまずあるんだけれども、製作のプロセスで他のスタッフのやりたいこととすり合わせ、揉まれた結果違うものになってることがよくある。でもそのズレは結果的に面白いものだと受け止めている」というコメントがあって、興味深かった。社会というと多数の人間が所属する共同体のあり方みたいなものを想像してしまうが、人と人が交わる時、そこにはミニマムな社会が立ち現れてくる。それが社会の原初的な姿であり、無数に存在するそれらに日々敏感になって何を感じ考えるか、それをいかに多数の成員からなる社会に敷衍できるか、と考えてみると面白いのかも。
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