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皆月のamamのレビュー・感想・評価

皆月(1999年製作の映画)
3.9
「みんな、月でした。がまんの限界です。さようなら」
諏訪の妻さよこは、こんな書置きを残して、貯金も持って、突然家出してしまった。
冴えない中年男の諏訪が、ヤクザもんの義弟アキラと、ソープ嬢の由美と共に、失踪した妻を探す旅に出るというお話。

荒井晴彦に好きな作品が多いのでみてみたけど、冒頭の入り、音楽の使い方が好みで、期待大。
続いて、荻野目慶子のヌードと奥田瑛二との絡みでおお!となって、
次に、おじさんがひざまづいてカーテンあけてる風俗で(そんなとこあるの?)ハイレグ姿の吉本多香美、M字開脚、ヌード、おもてなしシーン。
全裸の奥田瑛二が浴槽またぐとき、見えたらいけないものが見えた気がした。。

当時清楚なイメージで人気だった吉本多香美が、ソープ嬢を演じたということでも話題になった作品だそう。
女優さんが脱いで話題になるけど、これは暗がりでもちら見せでもない。潔い脱ぎっぷり。

撮り方が、思わせぶることもなく、変に演出入ってるでもなく、カメラがじーっとかじりついてるかんじで、裸体が妙に生々しく感じる。
監督はAV撮ってた人と知り、ちょっと納得。

ソープ行ってるのに男の人が手を出さなくて、風俗嬢が惹かれはじめるお話、よくあるけどこの手の男女の情愛話たまらん。
出て行った妻とのセックスが忘れられない諏訪と、諏訪とのセックスに惹かれてしまったソープ嬢の由美。
諏訪をぼこぼこ叩きながら愛する由美も、諏訪の前でアキラに犯されて泣く由美も、愛しているのか、憎んでいるのかわからない、アンビバレンスな感じが、妙にリアルで艶っぽい。

妻に逃げられ職失ってお金もない、しがないおじさんと、若くて美人なソープ嬢との共同生活。夢みたいな話だけど、諏訪の哀愁はんぱなくて、由美の気持ちがわかる気がする。
後ろをぴょんぴょんじゃなくて、のろのろとついてくる、うさぎみたいな人に、惹かれていくかんじ。
「さよこに与えたのは、給料とピストン運動と濁った精液だけだったのかもしれない」って台詞を真面目な顔でつぶやく諏訪さん。。

わたしはこのふたりの話だけで楽しくておなかいっぱい、満足だったんだけど、アキラもいるので話はもっと複雑です。
奇妙な組み合わせの三人に、心の絆のようなものが芽生えはじめ、諏訪もだんだん変わっていくのだけど、アキラの暴力描写がえげつなく、最後まで人物造形がよくわからなかった。
冒頭の手紙の意味も、人物に入り込めていなかったからか、月と太陽の定義がよくわからず、あ、この人って月なの?ってなかんじで。
もう誰も望んでいない妻を探す旅に出る後半は、少しだれて、退屈だったかな。カメラブレで酔ったし。

この話の良さは原作を読まないとわからないような気もした。
花村萬月、読んでみよう。

▽メモ
サラダ油って、そういう風に使っていいの?衝撃。
髪すくはさみ懐かしい。
白黒の布団カバーは色気ない。
音楽や雰囲気が崔洋一監督の、月はどっちに出ているに似てると思った。
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