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大統領の料理人のstanleyk2001のレビュー・感想・評価

大統領の料理人(2012年製作の映画)
3.7
『大統領の料理人』(Les Saveurs du palais)2012

「大統領とスタッフの為の専属料理人になっていただきたいのです。『おふくろの味』が良いとおっしゃっています。それに信頼できる人物からの推薦ですし」
「誰が私を推薦したのですか?」
「ジョエル・ロブション氏です」

オルタンス「ヘーゼルナッツ・オイル・バルサミコ各1/3、オリーブオイル、レモン汁も各1/3ね」
ニコラ「合計4/3」
オルタンス「パティシエの癖ね。きっちり測って計算。でも料理人は会計士じゃない。芸術家よ。アルジャントゥイユ産のアスパラガスで作品を創るの。パンポル産のプチオニオンやモデナ産のバルサミコでね」

大統領「最近いじめられているな?」
オルタンス「ええ」
大統領「私もだ。逆境は人生のトウガラシだ。逆境ほど頑張れる」

原題は「宮殿の味」

フランスの田舎でトリュフ料理で密かに知られる存在だったオルタンスはジョエル・ロブションの推薦でミッテラン大統領の専す属料理人になる。映画ではロブションとは「名刺交換しただけ」という台詞があるがアメリカで2年間共に働いたことがあるらしい。

大統領府(エリゼ宮)には主厨房がある。オルタンスが任せられたのはこじんまりとした大統領専属の厨房。パティシエのニコラが助手につけられる。

素材の味を生かした田舎料理は大統領の口にあって大いに喜ばれる。

しかし尊大な主厨房のシェフは陰日向に意地悪をする。良い食材を発注するとコストダウンを求められる。栄養士がメニューに口を出す。次第にモチベーションを失ったオルタンスは遂に辞表を出す。

大統領の食事を任されることになった主厨房のシェフは「遂に取り返したぞ!」と小躍りする。

若くて未経験な女性でなく経験と技術がある女性が疲弊して辞めていく。男性優位の世界にため息が出る。

映画はエリゼ宮を辞めたオルタンスが次に勤めた南極基地の任務完了の最後の日の様子とエリゼ宮での日々を交互に描いていく。

結局オルタンスを弾き出したエリゼ宮。それに対して満腔の感謝を込めて別れを惜しむ南極基地の男達。

いろんなことを考える。

外部の人材を入れる事で停滞した組織を活性化しようとした試みの失敗。(原因はフォローがなさすぎる事だぞ)

男性が仕切って来た組織に女性が入る事への反発。

だがオルタンスは南極の後の計画を既に立てている。

オルタンスの未来にエールを、送りたい。

追記
オルタンスが作る料理はおそらく「新しいフランス料理」というものなのだろう。バターやクリームを多用する伝統的なフランス料理ではなく素材の味を最大限に生かす料理。キャベツ一玉蒸しあげた料理や魚のスープはとても美味しそうだった。
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