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大統領の料理人のCocoonのレビュー・感想・評価

大統領の料理人(2012年製作の映画)
3.5
今度こそフランス語の勉強にもと思って視聴した。割と、軽い気持ちで見られる。いかにも映画らしい映画を、久しぶりに見たなと思った。
料理人と言う要素は、全編通して重要なんだけれど、1人の中年女性の職業的な奮闘記として楽しめる。


ここからネタバレ


男性だらけの大統領の料理人になった主人公は、孤軍奮闘する姿が颯爽としていてかっこいい。自分のやりたいことにしっかり芯を持っているし、大統領との心温まるエピソードも素敵だ。
理不尽な仕打ちに腹を立てるところとか、もの申す所とかも、フランス女性らしい。自立した強い態度で素敵だなと思う。

男社会に塩を送った形になってしまったけど、自分は自分の生き方としてすっぱりとやめてしまうところも好きだなと思う。


そして、数々の郷土料理やフランス料理の奥深さが面白い。
固有種の野菜がなくなっていっていることや、自国の文化としての食事や料理に精通していて、問題意識を持つプロとしての主人公の態度にも非常に感銘を受ける。
自ら材料を取りに行くところも何度も描かれるけれど、現場でずっとやってきた叩き上げのシェフとしての気取らない姿と厳しいこだわりを同時に感じることができて、優れた業者だなと思った。

とにかく美味しそうで食べてみたいなと思うけれど、いかんせん使われている用語も専門的なので、フランス料理にあまり明るくない私にとってはどんなものだかよくわからなかった。
さすが世界3大料理と言われている。フランス料理だけあって、独自の世界があるんだなと言う事は伝わった。

大統領のシンプルな祖母の作ってくれたような料理が食べたいと言う、本人も老齢に差し掛かってからの希望が胸に迫った。
多分歳をとればとるほど、そういうシンプルな愛情や安心感みたいなものの大切さが身に染みてくるんだと思う。それがよく共感できた。

その半面で、シンプルで素材の味が生きた料理と言うのは、昔は普通だったけれど、今では手にに入れるのが難しく、いかにもぜいたくな料理よりもはるかに高級になってしまったと言うこと。
皮肉だけど、現代の食のあり方を痛烈に描いていて、それも小気味が良かった。

それにしても、おばあちゃんの料理のレベルでも相当凝った料理が多くて、昔のフランスの台所を預かる女性たちは、とても大変な労働をしてきたんだなと思わされた。

最後の大統領への手紙は、心のこもった、礼儀と丁寧さの伝わるエピソードで、手紙って素敵だなって思わされた。
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