ソマリア沖で起きた海賊による輸送船襲撃事件。実話です。期待以上にとても面白かった!
話が大きく動くまでに時間がかかるものもありますが、これは序盤で事件が起き、そこからラストまでずっと続く緊迫感。あまりにも緊迫感が続くので疲労感まで襲ってきます。
トム・ハンクスの演技は他の映画同様もちろん素晴らしかったです。が、海賊を演じた役者さんたちの迫真の演技も素晴らしかったです。
この事件の肝となるのはソマリアという国。恥ずかしながら私はソマリアについてほぼ何も知らなかったんですが、長年に渡る内戦や干ばつ、また無政府状態の時期もあり、「世界一危険な国」と言われているそうです。
以下ネタバレあり
この映画を通して見えてくるのはソマリアの貧困問題。
この海賊たちは何も自分の財を築きたくて海賊をしている訳ではありません。将軍に強要されて海賊行為を行っているのです。生きていくにはきっとこれしか選択肢はないのでしょう。
一方で絶体絶命の状況に陥るフィリップですが、彼の最大に幸運なこと、それはアメリカ人として生まれてきたこと。このような状況に陥ればアメリカ海軍が助けに来てくれる。それはこの海賊たちの置かれた境遇と比べてなんと恵まれたことか。
生まれた国は自分では選べません。どの国に生まれるかなんて運命に委ねるしかないのですが、生まれた国によってこんなにも生きやすさが違ってくる。
海賊の一人が言った言葉が忘れられません。
「いつかニューヨークに行って車を買うんだ」
恐らくソマリアに生まれた彼が、これを実現させるのは無理でしょう。でもそんな夢でも持っていないと生きていけなかったのかもしれません。ソマリアに生まれなければ、蛮行などせず穏やかに暮らしていたかもしれません。何とも言えない虚しさを感じずにはいられませんでした。