Masato

キャプテン・フィリップスのMasatoのレビュー・感想・評価

キャプテン・フィリップス(2013年製作の映画)
4.5

最初から最後までずっと汗びっしょりのスリラー。見終わったあとはフィリップス船長のように呆然としちゃうくらいに疲れる。実話ではあるものの、ワンシチュエーションにならずいくつかのスリラー要素が詰め込まれていて非常に面白かった。

社会派のポール・グリーングラス監督らしくアメリカ万歳の映画にはならず、外国漁船の乱獲が原因で漁業が成り立たなくなり、現地の漁師が海賊になってしまっている、もしくは犯罪組織に雇われているソマリアの現状を描いていた。調べると、欧米の産廃の投棄で病気の蔓延でも漁業が成り立たくなっていたとある。明らかに西洋諸国の被害を被っている。誰一人として救われない、みんなが傷ついたどんよりのラストも見事。

彼らはただの漁師でテロリストではない。貧困につけこんで雇う犯罪者もクズだが、この海賊たちをただの犯罪者として見てしまっては根本的な解決にはならないことを誰にでも分かるように描かれている。いまでは海賊行為が多すぎたことによる警備の強化や現地のソマリアの人々が漁業を活性化させたことによる産業の安定化により激減しているとのこと。フェアフィッシングと呼ぶらしい。世界を健全にしていく道はそこなんだよね。排除ではなく支援。

また、圧倒的な力すぎて逆に怖くなってくる海軍やネイビーシールズの存在の描き方も良かった。あまりに事務的に任務をこなしていく姿はヒーローというよりかはよくわからない怖い存在に見えた。アメリカにとっては赤子同然の海賊側にも感情移入できるようになっているので、その怖さが伝わる。その力が間違った方向に行けば取り返しがつかなくなるだろう。でもやはりシールズはカッコいい。

トム・ハンクスの演技力さすが。ラストは特に凄い。
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