オルキリア元ちきーた

キャプテン・フィリップスのオルキリア元ちきーたのレビュー・感想・評価

キャプテン・フィリップス(2013年製作の映画)
2.0
過去鑑賞。
「真実に基づく物語」が好きな旦那と共に映画館へ。
確かに緊迫した空気が張り詰めた命のやりとりの現場の物語だが
張り詰め過ぎて、映画としての抑揚がなさ過ぎて、所々で途中で眠気に襲われてしまった。
しかもこれは、アメリカ船籍の貨物船の船長の立場からの視点。
確かに、何の罪もないのに人質にされ
殺されるかどうか?の瀬戸際の物語なので
その過程を追う事で物語としての流れは出来るのだが

ひねくれ者の私は、海賊になった人間の方の情報が少なく、感情移入出来なかった事が不満要素。
なぜ海賊をしなければならなかったのか?
他の選択肢は無かったのか?
こんな事件が起きてしまうなら、どう対策すればいいのか?
そういったところまで見通せない、単なる「人質事件」「救出の過程開示」だけで終わってしまった。

「バーニングオーシャン」の時もそうだったのだが、事故や事件の恐ろしさを伝えたくて映画にするの、悪くないんだけど、それって「映画作品」としての深みという部分がどうしてもスポイルされやすい。

それでもウチの旦那みたいに「事実に基づく」という所が大事!と思う鑑賞者からしたら満足なのだろう。

でもさ、映画になったら、結局は事実に基づいた断片の継ぎ接ぎでしかなくなってしまう。
下手な継ぎ接ぎ具合だと、スポンサーからのクレームとか、キャストのギャラとか、製作費とかいう都合で、結局はドラマになってしまいがち。
まぁそれでも、海賊の役に無名のキャストを配してリアリティを出そうとしたりと努力している様でしたが、だからこそ、この船長のフィリップスの役は、本当にトム・ハンクスが適任だったのかどうかは、ずっと疑問のまま。

実際、ソマリア海の危険は、そこを利用する各国の「その国の主観的な正義」を押し通したいがために、好き勝手な法律や協定を振りかざして、本来そこの海を利用するはずの地元の人(大きく括れば中東地域)の利益や権利をかなり阻害している訳で。

そこをもっと掘り下げないと
なぜ海賊に襲われたのか
なぜ海賊が出るのか
という疑問への解答はない。

だったら、ソマリア海で職にあぶれた海賊達に「海賊なんかしなくても生活出来るように」と、マグロ漁船を渡し、その使い方を教えて仕事を創り出した寿司ざんまいの社長の真実の物語の方がよっぽど建設的に思えてしまう。

だからこれは社会的な映画ではなく
「アメリカの船が被害に遭いました」という事実を伝えたかっただけなんだね、という感想しか出てこない。