DaiOnojima

誘拐のDaiOnojimaのレビュー・感想・評価

誘拐(1997年製作の映画)
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先日亡くなった渡哲也の代表作は断然「仁義の墓場」(1975)と以前書いたけど、日活退社以降の作品でもう1本挙げるとすればこれか。映画脚本コンクール「城戸賞」の受賞作品を「ゴジラ」シリーズの大河原孝夫が監督したもの。大手企業の重役が何者かに誘拐され、犯人は身代金の受け渡しのTV中継を要求する……というお話。詳しく筋を書くと完全なネタバレになる作品なので書かないが、犯罪・社会派サスペンスとして、ハリウッド作品にも匹敵するスケールと面白さをもった大傑作。銀座や新宿の街頭で大量のエキストラを動員し、数十台のカメラを使ってゲリラ撮影した「動」の前半部の圧倒的な面白さ、そして一転して警察の地道な捜査で誘拐の「動機」と犯人が解き明かされる「静」の後半部の鮮やかな対照も見事。テーマも現代的だし、ハリウッドでリメイクされないのが不思議なほど。渡は「仁義の墓場」とは対照的な抑制された静かな演技で存在感がすごい。何度も見ているが、見るたび引き込まれる。未見の方はぜひぜひご覧頂きたいが、どうか事前に情報を一切入れないで見てください。絶対そのほうが面白いし、余計な予備知識などなくても、冒頭からトップスピードで一気に引き込まれて目を離せなくなるので。ちなみに私は市販のセルDVDで見ましたが、映像特典のプロデューサー、脚本家、監督、撮影監督などのコメントが大変に面白いので、興味のある方はそちらもぜひ。(2020/9/15記)
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