ろく

黒薔薇昇天のろくのレビュー・感想・評価

黒薔薇昇天(1975年製作の映画)
4.2
神代の映画って形式的にはマチズムなんだけど、よく見ると女性解放なんじゃないかと思う。その一方でマチズムの中での開放という条件付きなんだよと神代は思っていたのかも。僕はどうも最後の明るさにだまされてしまうけどそこのとこはどうなんだろうと。

「今いるところ」になんらかの「動きにくさ」が持っている人にとってこの映画は開放だろう。たとえそれが倫理的にどうかと思っても。そして暴力的なものだとしても。つまり安穏なやんわりと殺される感じに不満があるとしたらそれは思い切った飛躍が大事ということなんではないかな。ただその飛躍は本当に大変だしつらい。でもそれを飄々としてしまう人がいる。芹明香なんかその代表格。だから僕は芹の映画を見ると羨望の視線で見てしまう。

一方、谷ナオミはどうだろう。そこまでの跳躍ができるのか。いやできる/できないではないのかもしれない。もうそうなったら「飛ぶ」しかないのだ。そしてその「飛ぶ」が外野からみたら噴飯ものだとしてもそれは「飛ぶ」しかないんだよ。

最後に悩みながらもブル―フィルムの集団のついていく谷ナオミはもう「飛ぶ」しかないんだよ(いやすでに飛んでいるのだけど)。それはこのフィルムを見ている「あなた」にしてもだ。

音楽、キャメラと神代節全開で楽しい。とくに桟橋の構図とかはなんともいえないふわってした気になる。さらには裏にかかっている昭和歌謡。「悶絶!どんでん返し」なんかでもそうだけど僕はこの昭和歌謡に弱い。

以前観た場所は亀有名画座(大好きだった!)。当時、仕事に悩んでいた僕にとっては「このままではいけない」と思わせた作品だ。実に久々に観た。僕は飛べただろうか。
ろく

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