やん

ペコロスの母に会いに行くのやんのレビュー・感想・評価

ペコロスの母に会いに行く(2013年製作の映画)
4.5
私などでは言葉にできぬ程の素晴らしい作品。今年85歳、喜劇を撮らせたら抜群に巧い森崎東監督の職人芸。個人的に早くも今年の邦画No.1に決定したと言って良いんじゃないか、それ程の良作だ。歳を重ねることを否定しない(肯定ではない。このバランスがキモ)美しい人間讃歌。 悲観的になりがちな認知症や介護という非常に難しいテーマを、森崎監督ならではの優しさに満ちた温かい眼差しと、程よい笑いで前向きに捉えている。しかもクライマックスは映画的に、映画でしか表現出来ない表現で提示してみせた。号泣ではなくホロリとさせられる。 もうひとつ特筆すべきは撮影の浜田毅氏。とにかく「観てください!」としか言いようのない、美しい長崎の街並は勿論のこと役者の心情まで的確に捉える素晴らしいカメラ。これも職人技。苦言を呈するとすれば、赤城春枝さんのメイクが濃すぎることと竹中直人氏くらいか。特に竹中氏はアクが強すぎる為バランスを崩しているように感じる。まぁこれも私が氏をイマイチ好きではないという理由が大きいのは確か。なにはともあれ、本作こそまさに世代を超えて観て欲しい作品。僕の観た回(初日の19:15〜)は港北NTというローカルな地とはいえ客が5人と激寒な入り。難しいとは思うが、この作品が興行的に成功しないとしたら映画の未来を悲観的にならざる得ない。是非とも映画館で観て欲しい。
やん

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