Jeffrey

ロング・ウォーク・ホームのJeffreyのレビュー・感想・評価

ロング・ウォーク・ホーム(1990年製作の映画)
5.0
‪「ロング・ウォーク・ホーム」‬
‪冒頭、1955年アラバマ州モンゴメリー。保守的な夫。黒人メイド、バスボイコット事件。9マイルの道のりを歩く、決意、細やかな闘い…本作は55年に始まった黒人によるバス・ボイコット事件即ちR.パークスの勇気が保守的な南部の黒人、一部の白人、そして誰もが知るキング牧師を動かした公民権運動の母と称される人物の物語を断片的に違う人物の目線、角度で描いたVHSに残して置くのが余りにも勿体ない大傑作の本作を再鑑賞したが素晴らしい。かなり長い文章になるがご了承の程を…90年以降に山の様に製作された激動の60年代の人種差別映画、中でも本作は歴史的に貴重で重要な事件、テーマを映す。何とか観れる方には是非鑑賞を勧める。物語は黒人女性、上記のR.パークスが白人に席を譲らなかった事から不当逮捕に至る過程、それに端を発するボイコット事件…そしてとある白人一家にメイドとして雇われていた黒人女性の往復14キロの道のり、全力を尽くし彼女を守る白人妻との絆、友情を一触即発の事態の中で美しく強く描いた感動の物語だ。劇中に胸に刺さる台詞がある。S.スペイセク演じる女主人がW.ゴールドバーク演じる黒人メイドに“自分に出来る事はこれしかない、お金は夫のものだから…”と告げる下りが有るのだが堪らなく慟哭する。差別的な夫の良き妻として夫の逆鱗、迷惑にならない様に自ら精一杯出来る事を雇主と使用人と言う極端に地位が違う者同士が偏見を乗り越え壮大なゴスペルで幕を閉じるクライマックスまで続くストーリーは涙無しには観れない。単純に白人と黒人の闘いを描くのでは無く、互いの人種に救いを描いてる点、それは様々なシークエンスに見られる。娘がボイコットに非協力的、白人に囲まれる場面を白人が助ける場面、白人妻が保守的な弟に暴力をされる下り等、観客はそれらを観て多少なりとも南部にも救いを感じると思う…白人は言う南部は同じ合衆国でも別の国に感じると…本作の物語はまだたったの64年前の話しだ。そして近年大ヒットしたヘルプでラストロングショットでV.デイヴィスが歩くシーンや白人妻の娘と黒人メイドの絡みが本作と被り走馬灯のように観てきた全ての人種差別映画がパズルの如く脳裏を駆け巡り、深く考えさせられ慟哭した。本当に名作だ。一刻も早く円盤化し老若男女問わず観て欲しい作品だ。‬ ‪これ程人種による差別について核心を突いた作品も珍しい。‬
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