半兵衛

あの愛をふたたびの半兵衛のレビュー・感想・評価

あの愛をふたたび(1970年製作の映画)
3.8
どちらも家族を抱えている男女が、仕事で訪れたアメリカで短い時間の付き合いと知りつつ燃えていく大人のアバンチュール。そんな割りきりの恋愛をドライに、さらっと嫌味泣く泣く描くのがさすがフランス。

でも不倫する女優役のアニー・ジラルドはいいとして異国の地で彼女に溺れる作曲家ベルモンドは清濁を飲み込む大人の男を演じるにはチャラすぎるような。演技云々ではなく、役者のイメージの問題でゴダールや娯楽作品で培われたキャラクターが不倫する男にあまり合っていない気がする。ただデリバリーの注文でもするように自然に女性を口説く姿が様になっていてかっこいいのはベルモンドの面目躍如。

役者とドラマが今一つ合っていないのでモヤモヤするが、オープニングで流れる音楽がベルモンドが作曲してスタッフに聴かせている音楽だったり、不倫シーンかと思いきや実は撮影してる場面だったりと洒落たお遊びが全編にあって楽しめる。中でもモニュメント・バレー(?)で車を走らせるベルモンドが西部劇の音楽について語るとき演奏のイメージが音楽となって流れて勇壮に馬を走らせるインディアンのイメージ映像になったと思ったら、ベルモンドが乗る車にインディアンが並走してそこからベルモンドがインディアンとなって馬を走らせていくというイマジネーションに満ちた演出がエモくて最高。他にも映画の内輪ネタだったり、アドリブを交えた演技が独特なロマンのある不倫映画となって堪能できる。

大人の夢が終わってしまう瞬間で余韻を残すことなくバッサリと映画を終わらせるラストも個人的には好み。

それにしても『勝手にしやがれ』で女性や映画を通してアメリカへの愛を語っていたベルモンドが、本作で映画のスタッフ役としてアメリカを訪ねるという構図が興味深い。
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