ほん乃しおり

ビリティスのほん乃しおりのレビュー・感想・評価

ビリティス(1977年製作の映画)
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フランシスレイオーケストラで聴いた時から、
オルゴールの上でクルクルと少女が踊るような、夢心地なこの音楽が、一体どんな映画のために作られたのかを知りたくて仕方なかった。

ビリティスは私みたい。
少女の性への目覚め。
男性性への失望。
大人の同性への崇拝に近い憧れ。

ただ異性を好きになるのとは違って、同性への感情は、恋愛感情のほかに憧れや崇拝を多分に含むと感じる。同性愛を描いた映画を観ても、なんとなくどちらか一方の感情に偏って描かれていることが多いから、今まで「そうじゃない」と漠然と若干の不満を抱いてきたのだけれど、この映画は見事に両方の感情を描いていた。私が同性を好きになった時は本当にこんな感じの感情の動きだった。

ストーリーは監督の性癖でしかないとは思いつつ…。
ビリティスは恐らくルカのこともメリッサのことも愛している。けれど、メリッサへの気持ちには崇拝が含まれているから、心のどこかで到底敵わないという気持ちもある。
だから、メリッサとルカが愛し合うのならそれで良い、幸せだと言い聞かせて身を引いた。どちらも愛せてしまうバイセクシュアルの苦しみ。
「私はピエールよ」なんて、男を騙って首筋にキスをするのは切ない。結局、男の人には勝てない。愛する女性を慰められるのは男性だけだと、認めることがどれほど苦しいことか。

監督のロリコンセクハラ野郎問題は差し置いて、この映画は全てが美しく、私にとって宝物だ。
ほん乃しおり

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