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ビリティスのsoffieのレビュー・感想・評価

ビリティス(1977年製作の映画)
4.0
1977年公開

フランス映画

少女の美しい裸体を撮影する写真家
デヴィッド・ハミルトンの監督作品

題名の「ビリティス」はフランスの詩人
ピエール・ルイスが書き上げた叙事詩「ビリティス」が元となっている。

ピエール・ルイスの「ビリティス」を少し説明する。

私が生まれて初めて「レズビアン」という言葉を知った書物。

美しい挿絵と共にピエール・ルイスの「ビリティス」全文が和訳された本を小学校の時、紀伊国屋で見つけて当時の3ヶ月分のお小遣いで買った宝物。

ギリシャのレスボス島に詩人サッフォーがいた時代に生きたビリティスと、ビリティスに恋焦がれて一緒に暮らすようになる美少女ムナジディカとの、出会いから別れまでが「詩」として物語られている。

この叙事詩をピエール・ルイスはギリシャの島にある古い墓から掘り当てて、その古代ギリシャ語を訳して本にしたと発表して、古代ギリシャ考古学者達に波紋を与えたが、後に自作自演だったと発表。

多くの文学者に影響を与えた。

デヴィッド・ハミルトンもその影響を受けた1人なのだろう。
…しかしなぜ、あのビリティスの物語が現代フランスになるとここまでストーリーが変わるのか「?」と疑問が残る。

私は小学校の3年生くらいから、綺麗な大人の女性に惹かれる自分を意識していたが、どおいうわけかただの1度も
「同性に魅力を感じるなんて、どこかおかしいのだろうか?」
と疑問を持ったことが無い。

それどころか、まだ「同性愛」や「レズビアン」という言葉を知る以前から
「私はこの地球上でたった1人、女なのに女の人が好きな人間なんだ。それって凄くない?」
と1人感動していた過去がある。

なので、数年後サンフランシスコのゲイパレードを知った時「マイノリティ-少数派」のパレードとニュースで流れるのを見て。
「大勢で隊列を組んで大騒ぎしながら、交通規制までかかってパレードしてるのに、どこががマイノリティなのか?
地球上で私1人かと思ってたのに、無数にいるじゃないか」
と大きなショックを受けた。

こんな私なので、大人になってからLGBTの友人に
「自分が同性愛者だと認めるのが怖いんです、どうしたら自分自身を受け止められますか?悩んだ時どうやって乗り越えたんですか?」
と相談を受けると
「あなたは神様に選ばれたのよ、何を悩む必要があるの?誇りを持つべきよ、喜びなさい、そしてありのまま自分を受け入れるのです、それが出来た時あなたは心の底から満たされるのです」
と、宗教の勧誘みたいな事を言いそうになる。

そんな私のアイデンティティの確率を促した「ビリティス」
素敵な女の子とこんな風に知り合って
こんな風に愛し合って
こんな風に一緒に暮らして
こんな風に二人の仲が終わっていくんだな…と言うことを教えてくれた叙事詩。

その同じ題名の映画の存在を知ったのは、海外に12歳の時から留学していた兄が夏休みに帰国した時
「このサントラに触るなよ!僕の心の1番美しい物なんだから!!」
と大切にステレオの横に置いた今では珍しいLP版のサントラレコード(兄はレコード収集家)は
あの名曲「男と女」や「白い恋人達」を作曲したフランシス・レイの作曲だった。

(お兄ちゃんビリティス知ってるんだ!
映画になってたんだ〜!と思ったが、妹がビリティスの原作のファンで、しかもレズビアンだと兄は知らない。)

フランシス・レイのサントラをずっと聴いていたのに、映画を観たのは結構後だった。

~やっと映画の話~


多感な少女が、年上の結婚している従姉妹の家にバカンスで訪れる。
ブルジョワの優雅な屋敷と裕福な暮らし。
ところがある時、夜の庭を散歩していると偶然、従姉妹とその夫の寝室を覗いてしまう。
夫婦のいとなみとは言えないサディスティックな暴力を振るわれる従姉妹を見て目が離せなくなる主人公。
夫婦の仲が心から求め合い愛し合っているものでは無いと知った主人公は、憧れの従姉妹に猛烈に告白をる…

…というストーリーなのだが、2人が幸せな恋人同士になるわけではない。

この映画のどこに私の兄が心を奪われたのか、尋ねることは出来なかったが
デヴィッド・ハミルトンの美しい映像と、全編を包み込むフランシス・レイの音楽は1度観たら忘れないだろう。

小さな頃、デヴィッド・ハミルトンの写真を私は姉や兄が持っている雑誌を貰って切り抜いて集めていた。
美しい少女(当時の私からしたらみんな年上だったが)のコケティッシュな半裸や、女の子同士が触れ合っている淡い光の中の画像は、私のエロティックなファンタジーの世界を宇宙にまで昇華させる程の影響力があった。

大人になってから、ファッションの写真家達の話を友達としている時
「私、デヴィッド・ハミルトンも好き」と言うと
「あの変態写真家?」と言われて
「え!変態なの?」
「だって少女の裸ばかり撮ってるんだよロリコンでしょ」と言われた。

それも世間の評価なのだろうか…
だがしかし、その友に対しては
「あの美しい写真を見て感動を覚えず、私が好きだと言ったデヴィッド・ハミルトンを変態の一言で片付けたお前の感性は死んでいる」
と口には出さなかったが強く思った。

今や同性愛は「LGBT」とカテゴリーが広く知られて、レズビアン映画も沢山あるが、この映画は芸術性のある映画として金字塔と言えるだろう。
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