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ビリティスのakrutmのレビュー・感想・評価

ビリティス(1977年製作の映画)
4.1
男性との恋に憬れつつ性愛には恐怖心を抱き、年上の女性との同性愛に目覚めていくという不安定な思春期の女性のひと夏の経験を、あの有名な『男と女』の音楽を担当したフランシス・レイによるロマンティックな音楽とともに、ソフトフォーカスによる美しい映像で描いた官能青春映画。少女のヌード写真で有名な写真家のデヴィッド・ハミルトンの初監督作であり、少女たちが全裸で水浴びをする冒頭シーンをはじめとして、少女の性愛やヌードがふんだんに描かれている。

映像や音楽が綺麗なだけに、ビリティスが憧れて人妻メリサ(ビリティスの父親の友人の妻)とレズビアンの関係になるくらいまでは、とても印象に残る映画であった。やっぱりフランシス・レイの音楽は最高で、古き良き時代の香りに浸ることができる。一方で、寂しいメリサに男をあてがおうとする後半の展開はなんだかよくわからなかった。なぜか子分がついている謎の男ニキエスの役割も不明。ちなみに本映画の元ネタは、ビリティスという古代ギリシャの女流詩人の詩を、ピエール・ルイスが仏語に訳して1894年に出版した『ビリティスの詩』である。そのためか映画の中でも詩が挿入される。ただし、実は古代ギリシャの女流詩人ビリティスの歌という設定は事実ではなく、ピエール・ルイスの芸術的創作である。

本映画のビリティスは中高生くらいの10代の少女という設定なのだが、ビリティスを演じているパティ・ダーバンヴィルは当時すでに26歳である。でも髪型や背格好のせいか、全然違和感がなく見れてしまうところが凄い。でもアップを注視すると、10代の肌の感じではなさそうではあるが。これまた驚くのだが、同性愛の相手役である人妻メリサを演じたモナ・クリステンセン(ハミルトン監督の恋人で後の妻となる)は公開当時27歳と、パティ・ダーバンヴィルと1歳しか違わない。同世代には全く見えないのだから凄い。モナ・クリステンセンのゴツゴツした痩せ顔(ムンクの絵のような輪郭も!)は個人的には好きになれなかったが。

ビリティスと恋に落ちるカメラマンの男性ルカを演じているのは、ベルナール・ジロドーというイケメン俳優。個人的には、『ラ・ブーム』でソフィー・マルソー演じる少女ヴィックのドイツ語教師で、ヴィックの母親(ブリジット・フォッセー)と恋に落ちる役を演じた俳優として記憶に残っている。
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