あーさん

小さいおうちのあーさんのレビュー・感想・評価

小さいおうち(2013年製作の映画)
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邦画を観よう!シリーズ①
(山田洋次編)

自分が今まで観てきた映画はどういう傾向なのかな?とふと思い、数を数えてみたら、やはり洋画が多かった(色んな国引っくるめて、というのもあるけれど)。
邦画は435作品中97本、ドキュメンタリーやアニメーション他ジャンル不明の作品もあるとは言え、ざっと見積もって、4分の1程。
6年以上かけて100本も観てなかったのか、、とちょっと意外。
沢山、良い作品あるのになぁ。
という訳で、今回集中的に観ることに♪

今作、可愛らしいパッケージとタイトル・キャストに惹かれるも、あらすじやレビューを読むと不倫とか秘密とか何やら湿度高め…な感じ⁉︎
Filmarksのカテゴリが、サスペンスになってるし!笑
そのせいで、ずっと先延ばし案件になっていたのだが、、
たまたまBSでやっていたので、即鑑賞!

山田洋次監督と言えば、寅さん、釣りバカ日誌、学校、そして大好きな"幸福の黄色いハンカチ"。
人情とか家族とか、昭和を象徴するような人間らしいテーマをずっと描き続けている監督である。

若い頃はあんまりそういう作風が好きではなかったのだけれど、大人になってから観ると、いかにもベタなのに心に迫る、、というのか。
良さがわかるようになってきた、というのか。

原作は、"長いお別れ"の中島京子。
作品のトーンは、同じ作者だけあって似てる。あちらも良かった♪

時代は太平洋戦争の少し前、東京郊外、赤いお屋根の"小さいお家"に暮らす家族。
雪深い北国から女中奉公に来たタキ(黒木華)と平井家の奥様とき子(松たか子)、旦那様(片岡孝太郎)、そしてぼっちゃん。
従順で働き者のタキも、上品で明るい奥様も、わんぱくでかわいいぼっちゃんも、家庭のことは妻に任せて仕事熱心な旦那様も、裕福だということ以外は、典型的な日本のごく普通の家庭の人々である。

一見平和な日々の中に、戦争の暗い影、そして家族の秘め事、、
等が絡まって行き、物語は思わぬ展開に。。

晩年のタキ(倍賞千恵子)が、ふと思い至って書き始めた自分の人生の回顧録。
それを回想していく…という内容なのだけれど、甥の次男役の妻夫木聡が現代と昔を繋ぐ橋渡し的存在。
この人はイマドキ過ぎず、真面目過ぎず、誠実な役をやらせたら本当に上手い♪
倍賞千恵子は、山田洋次ファミリーの重鎮!
改めて、若い頃から色んな作品に出てるなぁ、と。

タキ役の黒木華は、さすが自然な演技だったなぁ。。昭和世代の控えめな役を違和感なく演じていて、割烹着姿も板についている。
松たか子の奥様も、品があって可愛らしい。
着物の所作は、やはり間違いない。

他にも橋爪功、吉行和子なんかの配置具合も絶妙♪タキが足の裏を踏んであげるシーンでは、ほっこり。。

家のしつらえとか、着物、畳、昭和の独特の匂いが作品の中に沢山立ち込めていて、それらに包まれているだけで、なんとも言えない
懐かしい気持ちになる。

今となっては想像するしかないこの時代を生きる人々の息づかいを、監督は描きたかったのだろうな。

不倫とか、秘め事とか、そういうのはメインのテーマではなくて(サスペンスなんて書いてあるから、所々穿った見方をしてしまった💦)、戦争がもたらした悲劇だったり、でも確かにその時代を生きた人々の暮らしだったり、家族のやりとりだったり、そういうものの方が印象に残っている。

晩年のタキが急に泣くシーン。
どうして、彼女は泣いたのか?
悲しみ?後悔?安堵?

それは、最後になってわかるのだけれど(晩年のぼっちゃん役が故・米倉斉加年さん…)、そこで私も泣いてしまったなぁ。。

明確にどこが、とか言えないのだけれど、どうにも心に刺さる作品だった。
言葉にできない味わいがあって、それをどう表現して良いか、今の私にはわからない。

こんな気持ちは、久しぶりかもしれない。。

ちょっと切なくて、後を引く。



**
原作本、読んでいる最中ですが、とても面白くて映画の中で謎だった部分や、昭和初期の暮らしの知恵、伝統行事についてより詳しく書かれているので、興味のある方は是非!
映画の数倍面白いです♪
勿論、山田洋次監督の解釈、味付けも改めて素敵だな、と😊

おまけ
最後の方に出てくる児童書のお店、表参道のクレヨンハウスじゃないかな〜?
とても、懐かしくて嬉しかった💓
あーさん

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