松たか子、戦時中にあらわる。
黒木華さんがベルリン国際映画祭で受賞したことで知られている本作。しかし、正直なところ黒木華さんよりも松たか子さんの演技に圧倒される。
とにかく主人公・時子の艶っぽさ、凛々しさ、そして隠し持っている寂しさを含んだ振る舞いが見事だ。
さて、原作ではもう少し人間関係が複雑らしく、時子に対するタキの秘めた想いがメインとのこと。対して本作では、戦時中という「危機の時代」において、愛に忠実に生きようと禁断の関係に手を出した女性の物語として脚色されている。
たとえ戦時中であってもそうした「欲」はたしかに存在したであろうということを示したという意味で、本作は独特の存在感を放っているのかもしれない。