義清

標的の村の義清のレビュー・感想・評価

標的の村(2013年製作の映画)
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住民らが基地の前で体を張って泣き叫ぶ姿には、久々にうるっときた。フェンス越しに米兵が薄ら笑いを浮かべる前で、ともに県民同士である住民と警官らが揉み合うという構図は確かにおかしなものであり、切ないと感じた。高江という、山あり川あり滝あり畑ありの羨ましい場所、あんな場所が本当にあるということにまず驚いた。そして、そこにヘリポートやオスプレイを配備するということは、あの手付かずの自然に、一方的に文明や事故、騒音や戦争を持ち込むことであり、ゆゆしい事態だと思う。
ゲンさんちの海月ちゃん、ゲンさんに似ず、目がくりっとしててとても可愛かった。受け答えや眼差しにも聡明さや芯の太さが滲み出ていて、きっと大物になるのではなかろうかという印象を受けた。
これは映画館で観なければいけない作品ではない。映像や音のダイナミックさなどを売りにしているわけでもないのだし。これならテレビで十分。むしろ、多くの国民に拡散させるべき話題である以上、テレビで放送すべき。実際、今日だって、平日とはいえ劇場にいたのは数人のみ。今までに、いったい何人がこれを見たのだろう。これを見ずにして、ヘリポートの配置やスラップ裁判、座り込みのリアルな描写に触れる機会はなかろうに。
これは米軍基地に反対する側からの視点に完全に偏っている。でも、沖縄に行ったことさえない多くの日本人は、ここに描かれたことさえ知らない。少なくともこれを見れば、そこから自分の見識を広めていくのにいい機会になる。
ドキュメンタリーに寛容でないテレビ局の姿勢って、ホントにさみしいものだと思う。いや、ドキュメンタリーを見ようとしない視聴者の貧困な姿勢が問題だ。
義清

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