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悪の法則のytのレビュー・感想・評価

悪の法則(2013年製作の映画)
3.3
アメリカの現代文学を代表する小説家として有名なコーマック・マッカーシーが直接書き下ろした脚本のサスペンス・スリラー映画。監督、キャスト共々豪華布陣で制作された本作だがイマイチ跳ねず、興行収入も7000万ドル。主に”欲”と”死”を中心に人間の本能がもたらす結果について映像文学のように描かれている。ラストが胸糞エンドでも有名だが、何度か観たくなる作品。

[あらすじ]
→恋人との結婚を決めた弁護士が、ほんの出来心から良くないビジネスに足を踏み入れてしまう。彼は友人の実業家から裏社会の仲買人を紹介され、メキシコの麻薬取引に加担する。しかし取引中にトラブルが発生し、疑いをかけられた彼らは……。

[レビュー]
・率直な評価は分かり難い、これに尽きる。有名小説家のマッカーシーが書き下ろしたこともあり、人間の欲望や悪がありのままに見事に描かれている。だが一方で、脚本が文学的すぎたのか台詞が長々としていたり、事件の内容も直接的に伝わる描写じゃないため妙に分かりにくい。会話の内容も物語の本筋に関わる部分とそうでない部分の差が明確ではないため、疲れてしまう印象。そのせいか、途中で入る残酷なシーンは頭の中にこびりついている。

・物語は序盤で起きる物語がやがて後半に効き始めるという展開方法。無難で他作品にも多く使われる。一連の流れを経て真の悪は誰なのか、というよりも人間の欲や死がもたらす”悪”による”恐怖”は何なのかを描いているが、映像化が正解なのか。そもそも映画として観て会話劇が多く、話もそこまで起伏がないままラストへ繋がるのはどうかと思う。鑑賞後に長々と作品のメッセージを考えなければならないのはどうなのだろう。ラストシーンも大体想像出来るけど、安直でもある。こういった可視化出来ないメッセージ性ほどあの短さで終わらせるべきではないと思うしね。

・だが逆に言えば、この作品はよく出来てるとも言える。難しいと感じれば感じるほど、言葉に出来ない欲望への悪に対する恐怖を繊細に描いているとも言えるから。だからこそ多少分かりにくくても何回か観直したくなる作品なのだろう。この作品が賛否両論分かれる理由が何となく分かる。

👉ここまでレビューを書いていると、何故かもう一度観たくなる不思議な作品である。人間の本能を怖くかつ面白く描きあげた本作品は賞を取らずともそのレベルまでは達しているだろう。結局面白かったのか面白くなかったのかどっちなのかって?……。もう一度観てこよう(以下無限ループ)。
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