アーリー

悪の法則のアーリーのレビュー・感想・評価

悪の法則(2013年製作の映画)
3.8
2023.9.15

公開当時なんとなく覚えてる。面白そうやったけど観やんかったやつ。10年の時を経て初鑑賞。

なぜこんなキャストが集まってしまったのか。あんまり評価が良くないのは豪華なキャスト集結しすぎて期待値が高まったからでは。あとエンタメな感じを求めちゃう。蓋開けて観ると全然思ってたのと違った。

 全編ほぼ会話劇。弁護士の男が金のために麻薬ビジネスに手をだすと言うのが大まかなストーリー。ただ今作が描きたいのはそこではない。悪に手を染めた男が陥る変えられない現実を徹底的に描き続ける。麻薬カルテルの存在が劇中ずっとあるけど、組織としてちゃんと描かれることはなく、主人公が弁護士としての経験を活かしたスカッとする出し抜き方とか、ピンチを脱するとかも全くない。まだ大丈夫と思っていても突然終わりは来る。そうなるともう逆転は出来ないし、逃げることも出来ない。日々の何気ない選択が未来に与える影響は計り知れない。自分の未来を左右する選択は唐突に、けど確実に訪れて、人は何気なく選ぶ。劇中で弁護士の未来を決定づけた選択は本当に唐突で、そこからどんどん彼の周りは不穏な空気を帯びていく。彼は色んな人に助けを求めるけど、言われるのは現実を受け入れろということだけ。もうどんだけ頑張っても何も変わらないし、過去には戻れないし、愛する人はかえってこない。そんな現実をずーっと突きつけられる弁護士とそれに付き合わされる観客。あんなにも救いのない人や展開は初めて。エンターテイメントなら、どれだけピンチでも主人公が必ず勝つし、愛する人は助かる。例外はもちろんあるけど、それでも最後は希望を持って話を締めくくるはず。でも今作は映画の後半部分からバッドエンドで終わることをキャラクターたちから教えられてる感じ。主人公に向かって今更どうしたって手遅れだよって伝えてるのをこちらは眺めてる。ほんでしっかりバッドエンドやし。首絞める機械とかスナッフムービーとか、わざと話に出したんかな。その話を聞かされた上でバッドエンドですよって言われたらしっかり想像出来る。伏線は後から回収された時にようやく意味がわかるのが気持ちいいけど、今作は敢えて伏線を目の前にぶら下げて、逃れられない最悪の結末を想像させる。そんでしっかりそのままの展開にする。伏線というよりフラグか。

キャメロン・ディアスの行動理由があんまり伝わってこない。そもそも何が起きてるのかをちゃんと教えてくれないというか、すごい速さでしかも一回ぐらいしか言ってくれへんから、かなりの集中と読み取る力が求められる。いまだにキャメロンとペネロペ・クルスの電話のシーンとかなんやったんかわからんし。あとユダヤ人関連の会話とか、要所要所で哲学的で教養が必要なのも感じるし。不親切な映画とも言えるけど、でもこれこそ映画って感じもする。

とにかく後味が悪い作品。楽しさはないけど脚本が面白いなって感じ。久しぶりにこんなしっかり観ないといけない、かつ色々考えられる作品を観た。
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