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チャップリンの寄席見物のdalichokoのレビュー・感想・評価

チャップリンの寄席見物(1915年製作の映画)
5.0
 カラー映像でこの映画を見た。極めて辛らつでおぞましいコメディと言える。チャップリンは二役。金持ちの紳士と、桟敷席の酔っ払い。チャップリンの映画は時に愛に溢れ、根底には現実な残酷性がある。
 この二文法はチャップリンのシリーズで何度も繰り返されてきているが、この映画でもまた同じことが繰り返される。ちなみにこの作品は、チャップリンがまだイギリスの舞台に立っていた頃「唖鳥(おしどり)」というタイトルで演じられたものらしい。日本の寄席では「芝浜」などで”おしどり夫婦”が演じられるが、この映画は少し意味が違うようだ。

 チャップリンを1915年にキーストンから強引に引き抜いたシカゴのエッサネイで、チャップリンのドラマ作りは進化する。キーストン時代の単なるドタバタではなく、内容に時代背景を織り込むなどの工夫が施される。当時まだ26歳のチャップリンはシカゴで何を見たのだろうか?
 当時のシカゴはニューヨークに次ぐ第二の都市として格別の進化を遂げた反面、富裕層の肥大に反比例して、貧しい人々の生活は困窮し暴徒化するほど深刻だったらしい。
 そのあたりのことがこの映画の桟敷席のシーンに示されている。チャップリンのキャラクターとは思えないような人相の悪い酔っ払いが、最後に桟敷席から1階の金持ちめがけて水を撒くというシーンで盛り上がる。
 二役で金持ちを演じるチャップリンは、酔った勢いで自ら舞台に立ち笑いをとる。こうしたふたつの側面が、当時のシカゴという都市の時代背景をうまく写し取っているのではないだろうか。そしていまもこの縮図は我々の目の前にある。
 
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