新潟の映画野郎らりほう

アナと雪の女王の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

アナと雪の女王(2013年製作の映画)
3.0
【スティグマ】


自らを投げ抛ち 全力で他者を想う ― 其が結果として自身を救う事となる ― 姉:エルサと妹:アナの鏡像関係。

であるならば、氷を隔て見つめ合う二人の“透過/鏡写”表現が 是非欲しかったところだが―。

他者との関係性の冷え込み。人々との距離化。痛切な孤独と 相反し高まる孤高の精神性の歓び。
各場面共に一応 心象/概況の顕現化は見えるものの、それらが然程心に響かないのは 前述の氷の扱いに代表される詰めの甘さに依るものか、其れとも歌曲の主張に押し負けたか。

閉ざされた後に また開け放たれる門扉/扉。それら表現も悉く脆弱である。



姉に依り創傷〈スティグマ〉を負う妹。無論そのスティグマは姉の心にも同様に刻まれている筈だ。
彼女達は自らに刻まれたスティグマと向き合う事で成長する。

惜しむらくは、そのスティグマを観客の心にも深く刻むべきであった筈だが、果たして本作は 観客を決然と突き放しただろうか。“迎合主義”にしか見えんが。


『ありのまま〃』―自己屹立をせんと自らを縛る種々様々な手枷/しがらみを打ち壊そうとするエルサだが、彼女を本当に縛りつけているのは『ディズニー映画』とゆう“枠組み”である皮肉。
彼女が最後に見せる ある意味“迎合主義”的落とし所は果たして意識的な反面教師か、それとも無知盲目無自覚な順応主義者か。


主題的に何一つ解決と成っていないにも拘わらず、其れを良しとしているのが“枠組みの振り払い難い呪縛”を物語っている。




〈追記〉

その事には製作陣も十分自覚的であった様で、続編では一転 完全にディズニー映画の枠組みを打ち破っている。




《劇場観賞》