文化勲章を受賞した横山大観に、記者が取材をするという冒頭から始まる。
五浦六角堂を建てた岡倉天心と、その弟子たちの奮闘。西洋化が進む怒涛の明治期に、日本画とは何かを追求していく人間の映画。
日本映画において菱田春草に焦点を当てて描いた事があるのは、本作ぐらいではなかろうか。
とにかくメインの役者が良い。
天心役の竹中直人は勿論。大観役の中村獅童、春草役の平山浩行が最高。
台詞回しもカッコいいし、退屈しない。
配給時の宣伝文句に100年前にクールジャパンを創った男たちなどとあるが、クールジャパンなどという文句の軽さに嘲笑すら覚える。
後半に六角堂にて横たわる天心を窓越しに映すカットがあるのだが、硝子の歪みで竹中直人の顔が歪み、ちょっと面白かった。
絶対に最後の現代の東京藝術大学を映したシーンは要らなかった。
新制の現・東京藝術大学と、天心が創立した東京美術学校は別物であるし、そもそもが排斥された東京美術学校を辞任して、創立した日本美術院を描いた映画なのだから、そこを間違えてはいけない。
過去に松本清張原作の『脱兎のごとく・岡倉天心』というNHKのスペシャルドラマがあったそうだが、そこで下村観山を演じた本田博太郎が、今作では謎の船頭役で登場している。