テテレスタイ

セイフ ヘイヴンのテテレスタイのネタバレレビュー・内容・結末

セイフ ヘイヴン(2013年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

美しい川が印象的な恋愛映画。

映画の中盤当たりだったと思うけど、二人がカヌーに乗って川でデートしているシーンがあったんだけど、本当に川が綺麗で、川面がまるでピカピカに磨き上げた鏡みたいに二人の姿を反射して、とっても幻想的ですごく印象に残った。

絶対この川のシーンには何か意味があるんだろうなって思ってずっとスクリーンを見ていたら、終盤付近であの黒髪の女性(ジョー)が死んだ元奥さんだったことが分かって、ハッとした。そうか、ジョーも川に映る幻影のような存在だったんだね。カヌーの上で二人がジョーのことを話していたのもそういうことだったんだね。

そう思ったら、こんなに綺麗な土地なら、幻影が話しかけてくるようなそんな不思議な出来事だってあってもいいかもって思えた。



この映画は水もしくは液体がストーリーに随所で関わっていて、川だけでなく海岸だったり美味しい海の幸だったり、あるいは幸せの黄色いペンキだったりと、液体が二人を祝福してくれた。でも、海にジョシュ(息子)が落ちて溺れたり、突然の雷雨だったり、DV男が酒乱だったり、灯油をぶちまけたりと正反対のことも起こった。

だから水あるいは液体は、人間の二面性を表しているように思う。そして水だけでなく、映画の終盤では火の二面性も描かれていた。二人を祝福する花火と、二人を呪う嫉妬の炎だ。嫉妬?どうして嫉妬?

川面は鏡のようにピカピカで、人間の姿をそっくりそのまま映していた。でも、鏡に映る自分の姿が悪魔の顔を見せるなんていうおとぎ話があったりすると思うけど、この映画でも、川面に映る人間の心は悪魔の心を持っていたんだと思う。

川面に映る幻影がジョーならば、液体の二面性はジョーの二面性だ。そして火もまたジョーの二面性を表している。

ジョーは心から二人を祝福しているように見えたし、実際に手紙でも祝福していた。でも、本当にジョーは心の底から一点の曇りもなく二人を祝福できただろうか。人間は誰もが聖人というわけではない。愛した男を別の女に取られれば嫉妬の炎は燃え盛る。

炎上したあの家の炎はジョーの嫉妬の炎だ。

でも、あの家にはレクシー(娘)がいた。娘を焼き殺すなんてありえない。だからレクシーはあの時、外にいたんだね。娘が巻き添えにならないようにこっそり外に連れ出したんだね。それをあの女は家の中に戻してしまった。そして炎の檻に閉じ込められた。だから怒り狂って、あのDV男に乗り移ってあの女を殺そうとしたんだ。お前のせいだってね。いや、乗り移って自由に動けるなら先に娘を助けろよって思っちゃうけど、もうそういう冷静な判断が出来る状態ではなかったんだと思う。DV男は酒でぐでんぐでんになってたし、酔いにやられちゃったのかも。でも、アレックス(夫)が娘を助けたことで、ようやく怒りが収まりDV男から抜け出た。



この映画は恋愛の美しい面だけではなくて、残酷な部分も描いている。ジョーは癌だった。もうそれだけで何を言おうとしているのか分かる。心も癌に侵されていたのだろう。

燃えた家の残骸からジョーの手紙が出てきた。まったく焦げておらず中身は無事だった。だから、ジョーはそれだけは守ったんだと思う。嫉妬の炎に狂いながらもそれだけは守った。それが彼女の真実の愛で、生きていた時から変わらず守り続けたものだったんだと思う。