「元気が欲しい」とか、「泣きたい」「感動したい」などと思った時は、今作を絶対に見ない方がいい。これを見たからには、エンドクレジット直後、ため息をつきながら速攻、ベッドに横たわって電気を消して寝るのだ。
　ぶっ飛ぶ倫理観。今日は待ちに待った2人の旅行デートなのだから、邪魔する者は片っ端から殺す。観光地を汚す不届き者はもちろん殺すし、自分たちより良い車で旅行しているカップルも殺す。可愛いペットのワンちゃんの糞を注意するムードブレイカー許すまじ、運転中に喧嘩になって歩行者を轢き殺してしまったとしても、それはそんな時にジョギングしているソイツが悪い。
　監督ベン・ウィトリーのジャンル混合ホラー『キル・リスト』の次の作品。そして、この『サイトシアーズ』の次の作品がJ・G・バラードの『ハイ・ライズ』原作の同名作品という、まさにベン・ウィトリーは「鬼才」という呼び名が相応しい監督。前作『キル・リスト』で見せた人体破壊描写もさることながら、「人を殺す瞬間」に映画が嬉々として動き出すという、全く変な映画だよ、これ。そして、おおよそ理解不能な殺人カップルに見事に感情移入させ、普遍的な純愛を見せると思いきや……ベン・ウィトリー、お前、本当に何のつもりだよ。【短】

このタイトルだしなんかグロめのギャグかなと思って見たら、けっこう気が落ち込む内容だった…。

主人公カップルは、陰キャでいろいろうまくいってなさそうで、ママはウゼーし、ちょっと同情してしまうんだけどやっぱダメ。ちょっとしたシーンから気持ち悪さが漂ってくる（セクハラされたとか言いがかりつけて逆ギレとかいうのがいちばん胸糞…こういう奴いるよな）。
だけど一方で彼らが旅行中にサクサク殺していくヤツらも、なんつーかちょっと嫌なヤツらなんだよなー…あのバチェロレッテパーティの女たちとかわたしでも殺したくなったね。

けどとにかく、主人公のカップルみたいなのには絶対関わりたくない。
でも、そうなるのもわからないでもないなあと、思ってしまう、へんな説得力があるのが面白いし怖い映画でした。

（路面電車博物館とか、鉛筆博物館✏️とかの地味なイギリス観光案内はけっこう楽しかった）

ベン・ウィートリー監督は『フリー・ファイヤー』の頃から気になっていた人物。
この人、まぁ一言で言うとオタク監督です。
特に本作はエドガー・ライトが製作総指揮ということもあり、とても気になっていた作品。
完全に観る人を選ぶが、私は結構楽しめた。

主役の中年カップルがひょんなコトから殺人事件を起こしてしまい、逃亡する先々で不運にも次々と罪を重ねていく…的なストーリーをイメージしていたが、全っっ然違っていた。
単純にムカつくヤツを衝動的に次から次へとブチ殺していくだけ。

物語の序盤は『ゴミを平気でポイ捨てするヤツ』や、『エリートぶって上から目線で知った風なコトを言うヤツ』がターゲット。
日常生活でこういう『イラっ！」と来る場面は多々あるのでちょっと共感してしまった。
でも途中からは殺人の理由が2人の痴話喧嘩の”腹いせ“になって行くから思いっきりタチが悪い。
この2人、見た目は中年だが中身は未熟なガキのまんま。
アホみたいにセックスばかりしては『愛してる』だの『別れよう』だのを繰り返す。
ジャケットの写真にもある通り、ヒゲ面の太ったオッサンとポッチャリで特に美しくもないオバさんという、何とも言えない2人…。
ハッキリ言ってキモい。

幾つになっても男は夢ばかり見てるし、女は現実（事実）ばかりを要求する。
ラストはそんな『男と女の関係』を皮肉っていて面白い。

GWの最終日、我ながら何とも変態的な作品を観てしまった…(^_^;)