MasaichiYaguchi

ファントム 開戦前夜のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ファントム 開戦前夜(2012年製作の映画)
3.2
この作品を観ると、我々が享受している平和は名も無き人々の活躍によって維持されているように思えてくる。
映画は、45年前に実際に起こった核ミサイル搭載のソ連の潜水艦がハワイ沖で消息を絶った謎を大胆な仮説を基に描いている。
主人公の潜水艦長デミは帰港して日も浅いというのに、海軍の司令官から極秘任務を命ぜられ、クルーと共に旧式の潜水艦で再び出港する。
この潜水艦には「極秘実験」を行う技術者のブルニーらも乗り込んでいて、当初から不穏な空気に包まれている。
艦長のデミは過去に取り返しのつかない事故を起こしていて、肉体的にも精神的にもその傷を引きずっている。
この悩める主人公をエド・ハリスが陰影深く演じていて心に残る。
そして「Ⅹファイル」のディビッド・ドゥカブニーが演じる、技術者ブルニーの行う実験内容や彼の「本当の狙い」がストーリーの進行につれて明らかになっていく。
潜水艦という閉所空間を舞台にしているので、潜水艦同士の駆け引きや、艦内で繰り広げるアクションにはいやが上にも心拍数が上がる。
デミたちが乗った潜水艦の結末は史実としてあるので運命は変えられない。
それでも本作品に何か救いを感じるのは過去のトラウマを乗り越え、愛する家族の為、そして世界を救う為に戦った男たちの姿に共感を覚えるからだと思う。
ラストシーンで、タイトルの「ファントム」にもう一つの意味合いがあったことに気付きます。