せみ多論

トリック劇場版 ラストステージのせみ多論のレビュー・感想・評価

4.0
ドラマも新作スペシャルも全部見て、ようやくここに来ることができた。

トリックの魅力は何かと改めて考えると、自分にとって一番大きいのは、フワリと浮かしたようなところ、というと何かうまく伝えられないが、例えば、一長一短である上田と山田、シニカルな笑いを含めながらどこか本質的な部分で孤独さを感じさせる二人のデコボコな関係、またお笑いで行くように見せながら、シリアスな路線もチラリと見せて、でもどっちなのかわからなくなるようなストーリー、超能力というものが本当にあるのかないのかを明言しない、あえて終始グレーのまま。
そういう型にはまっているようで、ちょっぴりだけズレてるような、ある程度の枠の中でお約束を守りながら流動しているようなところなのかなと感じた。

そういうところで見ていることで何とも言えない安心感のような、昔なじみの店で食べる、あぁこの味だよねというような気持ちを楽しむことができるのかもしれない。

ストーリーラストの感じ好きでした。
記憶を失って生きていた山田が、ドラマ一話とダブるとき、上田の表情、「Youは本物か?」「私は本物です」の嬉しさ。
記憶が戻るかはわからなくとも、また新しい日々は始まるのだろう。だからこその一話とシンクロする演出。上田の最後の表情はさすがに泣けてきた。それこそ上田の成長した証であり、トリックの最後にふさわしかったのでは。

冒頭で脱出マジックを見せて、ラスト助かったのはそういうマジックのネタで助かったのか、それとも山田には本当に超能力のようなものがあったのか、それは少なくとも作中では明らかになっていない。まさに長い月日をかけてきたトリックのテーマの一つ超能力の存在の真偽を、いい意味で明らかにしない、まぁ最後までグレーのままだけど、曖昧なままのものがあったって良いじゃないというような気がして仕方がない。

良かったなぁ、トリックシリーズ。
最後に石原が出てきたのもうれしかったですね。
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