kuu

シビル・ガン/楽園をくださいのkuuのレビュー・感想・評価

3.6
『シビル・ガン 楽園をください』
原題Ride with the Devil.
製作年1999年。上映時間138分。

アン・リー監督が、アメリカ南北戦争時代の若者たちの姿を描いた米国産人間ドラマ。

1861年、アメリカ南部ミズーリ州。
親友同士であるドイツ移民の青年ジェイクと裕福な農園主の息子ジャックは、南北戦争の勃発により希望に満ちた青春の道を絶たれる。
父を北軍派に殺されたジャックと、本来なら北軍のドイツ人グループに加わるべきジェイクも、南部の男として南軍派のゲリラ隊に加わった。 
しかしやがて、この戦いは戦う意味すら見えない狂気の殺戮へと変貌していく。
そして、歴史的な事件“ローレンスの大虐殺”が幕を開けた。。。

南北戦争ほど米国人の感情に訴える歴史トピッ クはないんちゃうかな。
奴隷制度をめぐって争われたこの戦争てのは、自国の山河や、町を戦場と化して、米国史上最も多約62万人(第二次世界大戦はおよそ四〇万人)の戦死者を出しよった。
原作はクライム・フィクション作家ダニ エル・ウッドレルの小説。

『ローレンスの虐殺』とかの戦闘シーンは大規模やけど、物語は複雑で繊細。
勧善懲悪の物語でもあらへんし、
どっちの陣営も苦しんだのだから結局米国万歳やとセンチメンタルにナショナリズムを強調したフィルムでもあらへん。
ブルー (米国合衆国軍)対グレー (米国連合国軍)の正規軍に属さへん自警団ゲリラの話で、リンカーンやリー将軍とかのビッグネームや、『タラ』についての大河ドラマじゃない。
端的に云えば、ミクロな世界を舞台として自由とは何ぞやを問う話やと思う。
主な舞台をミズーリ州ならびにカンザス州としているのも目をひく。
カンザスてのは、戦争勃発以前に奴隷制度廃止派と支持派による流血事件が多発して、開戦の直接のキッカケとなった場所。
奴隷制を持たない自由州となったけど、怨恨は開戦後も衝突を生んだ。
ミズーリ州は奴隷制度を持ちながら、奴隷制度廃止を目指す米国合衆国にとどまった『境界州』の一つ。
奴隷制支持派も独自の政府や軍を設けた同州は、平穏にはほど遠くゲリラ戦が頻発した。
鯔のつまり、同じコミュニティに暮らす人々が敵味方に分かれ苛烈な争いを繰り広げたん。
自由の獲得、 
解放、
ほんで、望郷の念をめぐるストーリーが繰り広げられてました。
マイノリティが主な登場人物で、ドイツ生まれの父ちゃんを持ち、貧乏な家庭で育ったジェイク・ロデル、自由アフリカン・アメリカンのダニエル・ホルト。
親友の子を産んだ未亡人スー・リー・シェリー。
これらの弱き若者が出会い、助け合いつつ~の、お互いに『自由』てのを獲得していく。
自由は押しつけられる大義ではなく個人が主体的に勝ち取るもの。
リー監督のメッセージはここにあるんかもしれへん。

力説すっとこは今作品がファンタジックな歴史フィクション、あるいはラブロマンスじゃないちゅうこと。 
リアルな歴史映画など、そもそも存在 しないとは云え、リアルさを追求するその執念は脱帽っす。
リー監督は俳優陣に1ヶ月の南北戦争ブートキャンプへの参加を課して、乗馬や射撃などを学ばせたそうです。 膨大な量の資料を読んで、勉強会とかも頻繁に開いたって云うし、俳優は南北戦争時代の独特の言い回しをマスターすんのに苦労したそうです。 
アン・リー監督が『ブロークバック・マウンテン』で全米を震撼させたんは2005年、米国からしたら外国人やけど、中西部とカウボーイと云うド・真ん中な題材を使って、セ クシャル・マイノリティの生きざまを描いてみせたこの片鱗は今作品で見えるかな。
kuu

kuu