半兵衛

白い指の戯れの半兵衛のレビュー・感想・評価

白い指の戯れ(1972年製作の映画)
4.0
少女がある出来事からスリのグループに参加してその流れに身を任せているうちに気づけば戻れない場所まで来てしまうという転落劇ながら、「この道を突き進むしかない」という前向きなスピリットでいつの間にかある種の高みに達してしまう境地はロベール・ブレッソンの『スリ』を彷彿とさせる。肉体的にも精神的にも一方的に弄ばれていたプロのスリ荒木一郎に対してする後半での主人公の行為は痛快。

神代辰巳脚本作品らしく物語はダラダラ進行し登場人物はセックスを含めて遊戯的な行動を繰り返しているが、それが行き場のない人間のドラマではなく瑞々しい青春のドラマとして昇華されているのはこれが映画監督デビュー作品の村川透による若い感性によるものか。そしてスリ行為を開始するメンバーの緊迫したやりとりのアクションが素晴らしく、後年松田優作の『遊戯』シリーズなどを手掛ける片鱗を覗かせている。

『帽子箱を持った少女』並みに少女には見えないけれど、キュートな魅力を発揮する主人公を演じる伊佐山ひろ子の好演が光る。あと荒木一郎のいかにも裏社会に存在しそうなヤバい人演技や、人懐っこさそうで実はしたたかな粟津號の刑事など脇役のサポートもgood。

長回しを自在に駆使して登場人物の息づかいを生々しく捉える姫田真佐久による撮影も印象的。
半兵衛

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