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スーサイド・ショップのNMのレビュー・感想・評価

スーサイド・ショップ(2012年製作の映画)
4.5
ここは自殺グッズ専門店。
首つりロープから毒薬まで何でもあり。
品質には自信あり。一度ご来店頂いたお客様は二度といらっしゃいません。

店のコンセプト上、この一家には人生において何かを楽しむという発想がない。常に人生を否定していなければ店員として成立しえない。
特に子ども二人は常に暗いやつれた顔。二人とも早く死にたいと思っている。客が確実に死んだか確認しに行くのも子どもたちの仕事。それで店の品質を保っている。

そんななか一家に生まれた男の子アラン。
なんとこの子はいつも微笑んでよく笑う。ゆゆしき事態。この家にそんな子がいてはならない。よく教え込まねば。

アランはいい子だが親にいくら言われても毎日楽しく友達と遊んでいるし、お客様に間違って「またのお越しを!」と言ってしまうし、常に笑顔。

そして少しずつ行動を起こしていくアラン。とても頭がよく、家族は段々変化していく。

まずは姉。小遣いを貯め、素敵なスカーフをプレゼントした。すると流石の姉もついに心を奪われ、夜中には一人でそれをまとってうっとりしている。こんな姉は見たことがなく、アランも満足。
さらに姉は店に来た青年と恋に落ち、人生がバラ色に。
ついに母も喜び、初めてアランを褒めてくれた。
店内のものはみな売払い、その青年が作ったクレープで家の中でピクニックをする一家。

ただ、過労で寝込んでいた父はその変化を知らなかった。その名もミシマ。黒髪でカタナを持っている。
団らんする彼らを見てショックを受け、アランを殺してやろうとカタナを持って追い回す。

アランは家族が好きだが、もっと笑ってほしかった。
父を説得することができるのか......。


フランスらしい皮肉たっぷりの作品。自殺を薦める一家なんて不謹慎だと一見思うが、彼らが何を言っても観客は勝手に「そんなわけないよな」と反論できるような言葉選びになっていて巧妙。絵も歌も素晴らしく何より言葉運びが良い。いま絶望している人もこれを観たらつい説得されてしまうかも。
ユーモアを交えつつ、最後には感動と納得の終わり方ですっきりする。

ミシマが最後に見せる秘密は作品中唯一恐い。あれっと驚いた。
もしかしたらこんな店がどこかにあるのかも......。
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