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愛の渦のmichiのレビュー・感想・評価

愛の渦(2013年製作の映画)
4.7
乱交パーティを目的に裏風俗店に集った初対面の男女10人。性欲ない交ぜの会話劇。当然セックスシーンも多いわで、ポツドールによる芝居ではメゾネットの舞台セット上で全裸の役者が絡み合う、それまでに観たことのない衝撃だった。

いっぽうで映画は、カメラアイを通してしか表現できない。観る側も芝居のように同時多発的な乱交を恣意的に追うことは不可能で、カット割りされた映像、つまりその場へ居合わせた「自分の視線」としての没入だけがある。

そういった構造の差はあれど両者へ共通したテーマは、岩松了が岸田賞の選評で指摘していた「演技する必然」のようなもの。1回目の行為の後でも、男女はまったく素の状態において会話のはずまない緊迫した空気が続いた。

そこには行為する自分と、会話する自分を演じ分けざるを得ない、自意識の砦もしくは社会性の体のようなものが、乱交パーティを通してさえかたくなに存在し続けていることを示していた。数度の行為で和やかになるばかりか喧嘩腰のもめ事を通過し、朝には全てが幻想だったと言わんばかりの現実逃避的な解散。

芝居では役者との共時性によりものすごい緊迫感があった。映画においてはカメラアイによる没入を通じての時間的な抒情性を感じた。ようするに2つの違う表現形態どちらにおいても、三浦大輔の演出は際立っていたのだと思う。
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