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サカサマのパテマのRitzのレビュー・感想・評価

サカサマのパテマ(2013年製作の映画)
3.4
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 中
 下】

空に憧れるストーリーは数多く存在するが空を恐れるという設定は斬新。
かつての過ちにより人類は空に墜ちた。空を忌み嫌う「アイガ」に住むエイイチはある日地面から"堕ちて"きた「地下世界」の住人パテマと出会う。エイイチはパテマの素性を聞きどうにか故郷にかえしてやろうとするがその存在を嗅ぎつけたアイガの特殊警察によってパテマは囚われてしまう…
"サカサマ"世界からの脱出劇は既存の価値観を文字どおり180度ひっくり返しながら展開する、異世界系ボーイミーツガール。
逆さまの世界をひとつの画面に共存させるという試みが面白い。パテマとエイイチの"視点"の変化はなれるまで多少の戸惑いやぎこちなさを感じるが徐々に世界観が身体に馴染んでくるのはカット割の妙のおかげだろう。ストーリーは王道のボーイミーツガールもの。ラピュタに通づる世界観や冒険的要素も相まって全体的に子供向けな印象を受けた。しかし終盤の急展開には受け身での鑑賞に徹してしまっていると多少の置いてきぼりを食らうかもしれない。映像美や迫力ある動的なアニメーションは控えめだが確実に"魅せる"ことを考えて制作された作品であることの熱が全編から伝わってくる。3Dのような立体であることを主張した映像ではなく、平面的な描写はサカサマの世界感を端的に表現しつつ、あえて見せない部分の余白として観客の想像に受託させるので、各々に作品の世界観に浸ることができる。
映画もそうだが、ものごとに対して1つの視点ではなく様々な角度から見定めたいものだとそんなことを思った。
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