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海の沈黙のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

海の沈黙(1947年製作の映画)
3.8
なぜタイトルが「海」なのかと疑問に思った。海などどこにも出てこない。

フランス語のla mer (海)は、発音が「母(mere)」と同じ。日本語にも海に母が入っているように、寛大で創造の源、万物の母は海だ。母国を海にたとえたのだろう。


レジスタンス運動を行うフランス人たちは自らを海と呼び、フランスの深い知性を称え、波を荒立てず、しかし水面下では、流されず、自分たちのあるがままの自然の姿で暴力に対して非暴力で立ち向かった。

どんなに心優しい将校がフランス文化を誉めても、それは曲げられたり、融合されたりするものではなく、この文化を産み育てたフランス国民のものである。

戦争で暴力的に精神を奪われることを断固拒絶する非暴力の作品だった。

暴力よ、「さようなら」。

原作は第二次世界大戦下の1942年に秘密裏に発行され、レジスタンス運動に大きな影響を与えた。

個人の精神の自由を尊ぶフランスと、集団主義的同化及び排斥を掲げるドイツナチスは対照的。文化的に折り合いがつくわけがない。



以下↓ネタバレ





ドイツ将校が滞在するフランスの占領地の一軒家で叔父と姪がドイツ将校と一切話さず沈黙し続けることで、ドイツにささやかな抵抗(レジスタンス)の姿勢をみせる物語。将校は若い頃からフランスに憧れ、ドイツとフランスの融合を夢見ており、フランスの文化を敬愛してならない。将校はフランスを愛する気持ちを毎晩詩的にフランス人家族に独り語りで伝える。しかし、ドイツ軍の作戦は将校が夢見る融合ではなかった。徹底したフランス文化の破壊であり、手段を選ばず、親しく近づいて根こそぎ文化を壊してしまう戦略だった。将校は衝撃を受けフランス人家庭から離れ、地獄と呼ばれる前線に赴くのだった。
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